リバー、流されないでよ  ─たったの2分間のタイムループがもたらす大騒動─

2025年6月20日金曜日

映画 山口淳太 日本映画

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 独断と偏見とちょっとしたスパイス Vol.94




リバー、流されないでよ
─たったの2分間のタイムループがもたらす大騒動─ 










このブログに読んで下さっている貴方へ質問です。
貴方はどこで映画の情報を仕入れていますか?



私はもっぱらSNS。Xで映画作品を知る事が多いです。
何なら次見る映画を決めるのも基本的にはX。


Xがサービス終了しようものならば、
私は新しい映画を知る事が出来なくなるかもしれません。

ショート動画の映画紹介とか小説紹介からも新しい発見があるものの、ショート動画自体に依存性があって、ショート動画に時間を取られる事も多い今、Xが一番時間を取られないSNSなのかなって思ったり、思わなかったり。

SNSがインフラになるほど情報社会が発展しましたが、正直SNSが人や世界を不幸にしている事も否めません。しかし、物は使いよう。審議の程は分かりませんが、生の情報を触れるにはいい媒体かなって、半信半疑で信じています。

さて今回も当ブログを通して1本の映画作品をご紹介。
SNSの中でも化石みたいな周回遅れの媒体で昔ほど拡散力も無い、
オールドSNSのブログを用いて。




今回取り上げる作品は日本の京都が舞台のタイムリープSF映画。

リバー、流されないでよ

これも実はXを経由で知った作品。正直これは劇場でみたいって思っていたのだけど、あれよあれよと時が過ぎ、近くの映画館では上映終了してしまって、見れる劇場が自宅から車で2時間以上かかる天草市本渡にある映画館・本渡第一映劇で上映される事を知ったものの、ちょっと迷って、結局行かずに諦めた。

本渡第一映劇地方にある昔ながらの映画館。始まりは昭和7年(1932年)というとても歴史の古い映画館で、昭和の映画カルチャーを知る上で一度は行ってみたいって思っている。思っているけど、一方でそれなりの覚悟と意志がいる距離である事は違いない。

それから数年。惰性にも自分はアマプラで見た。
「映画を見る為に外に出る」カルチャーの終わりは近い。





あらすじ

舞台は京都市左京区の貴船。京都市の上の方で、夏場の避暑地として知られているようだ。そんな地区にある伝統的な旅館「ふじや」を中心に物語が繰り広げられる。

いつも通りの日常が繰り広げられる貴船と「ふじや」。
仕事の傍ら「ふじや」の中居・ミコトは旅館の隣を流れる川をほとりから眺めながら、思い悩んでいる様子。それからすぐに仕事に戻り、番頭さんと何気ない会話をしながら客室の食器を片付けていると次の瞬間、さっきまでいた川のほとりへと戻っていた。違和感を感じながらまた食器を片付けに番頭と客室へと戻り、デジャブを感じながら食器を片付けているとまた川のほとりに戻ってしまう。

何と貴船の一部地域と「ふじや」は突然2分間という短期間で時間がループし始めた。時間の檻に閉じ込められたミコトら「ふじや」の従業員と乗客たちはこの奇妙な状況に時折パニックになったり、むしろ人間関係のわだかまりを解く機会にしたりする。






面白かったです。おすすめしたいって思える作品でした。

元々ヨーロッパ企画という京都のローカル劇団が主体となって制作された映画作品。個人的には初めましての映画スタジオ。

2分間というあまりにも短い限られた時間を永遠ループするという特異な状況の中で、人間ドラマあり、SFありの映画になっています。正直2分間という時間的制約がある中で物語って成り立つのかなって疑問だったのだけど、むしろ2分間の制約というギミックが物語を面白くしていました。

ループ自体はするものの、ループに巻き込まれた人達の記憶は引き継がれるから、1ループ事に青春の甘い時間だったり、死者続出の地獄絵図になったする。それをテンポよく描きながら、一方で序盤、中盤、終盤事に物語の方向性を示しているから、見ていてダレないのはとても大きな魅力に感じた。

これは映画に限らないけど、作中の目的だったり、物語の終着点が見えないと、個人的に作品を見るモチベが下がってしまうから、ある程度示されると見るモチベが沸く。

登場人物達は1ループを「ターン」って言い始めてなんだかゲームみたいな感じ。
一方で矛盾もあって、場面ごとに雪が降ったり積もったり、「ターン」事に天候に変化が現れる。これを作中だと「世界線」が変わったって事になっている。

世界線ってシュタインズゲートって10年位にあったタイムスリップ物のアニメで使われて用語が、ここまで一般化した事にちょっと感動した場面。高校生の時ニコニコモバイルというガラゲーで見れるニコニコ動画のアプリでアニメの公式配信をガビガビ画質で見ていたから、ちょっと懐かしさを感じたね。

ループに巻き込まれた人達はこの状況にパニックを起こしたり、むしろこの状況を楽しんだり、人間関係の溝を埋めようとしたり。この異常な空間だからこそ描けるドラマだったと思う。

個人的に連載小説の執筆に追われる作家さんと編集者の関係が好きだった。一見お互いを嫌いあっていると思っていたら、深い所で信頼関係が見え隠れしていた事にお互いが気が付いたこと。いい場面だったと思います。

主人公のミコトも同じく旅館で料理人をしている彼氏・タクの事で何やら思うことがある様子。みんなが抱えているわだかまりがループを繰り返しながら解消していく様って、ループものの魅力。今回はループの時間は短いし、ループしても記憶が引き継がれるとはいっても、こういう緊急時だからこそ話せる事ってあるよね。

そうそう改めてタイムループものっていいよねって思った。
SFジャンルの中でもライト層に刺さりやすいし、タイムリープものって基本的なSF作品と違って説明とか不要で、何なら「お約束」みたいなものもあるぐらい。

やっぱSF作品って作品のインパクトと半比例してて、マイナージャンルなんよね。書店とか言ってもさ。早川書房とか早川文庫ってあんまりいい位置に置いてないでしょ。それが答え。

流行っている作品は多いのに「このSFがすごい。」みたいな宝島社の企画が無い当たり、やっぱり世間受けは良くない。でも時間物のSFは専門用語も少ないし、感覚的に分かりやすいしで、タイムリープものって定期的に話題作が出やすいとは言っても、これからもSFを牽引していくジャンルでしょうね。




この映画の難点は演義が全体的に舞台の様に大仰に感じた事。
例えはアニメの演義を実写でやったらおかしいでしょ。現実離れしていて。
それと一緒で舞台演義を実写映画でやると、自然さやリアリティが無くなって、やっぱり違和感が現れる。元が劇団が主体となって制作された映画とあって、やっぱり演義にちょっと違和感は感じた。

とは言え作品自体はがちがちのシリアルな作品では無く、コメディチックな作風だから目くじらをたてる程でも無いとは付け加えておきたい。




とりあえずタイムリープものの作品が読みたいと思ったら、とりあえず手に取って見て欲しい。テンポの良さと、良くまとまったストーリーが秀逸でした。ちょっとした矛盾点や疑問はあるけど、これを言い始めたら野暮なのでここでは触れません。でもやっぱXで話題になった作品とあって、強く光る部分が必ずありますね。

とても見ていて面白かったです。
個人的におすすめなので良かったら見てみて欲しいと思います。

ここからは余談なんですけど、
今回の舞台となった旅館「ふじや」は実在する旅館で、
本作で主人公ミコトを演じられた藤谷理子さんの実家はこの「ふじや」を営んでいる。そう、主演の実家がロケ地で、旅館に宿泊すれば聖地巡礼もできるという、ここまでくると実はこの映画自体が「ふじや」のプロモーションビデオでは無いのかなって思えてきた。

そうではないけど、いつかこういう旅館に泊まれる身分になってみたいなって思います。こういう旅館とは縁もゆかりも無い人生だったから。京都旅行の折には、「ふじや」に宿泊して聖地巡礼してみたいって思いました。劇中で使われた地下室とか建物内の探索とかも可能だったら見たい。物語を追いながら「こういう旅館の建物の構造ってこうなっているだ。」って興味深々で見てました。

こういう静かな場所で、物語に思いを馳せながら、空間を楽しみたいものです。



公式サイト


貴船 ふじや

旅館のサイトリンクも貼っています。良かったらぜひ。


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毎週金曜19時更新。 目に留まった創作物にレビューを書きます。批評家では無いので、凝った事は書きません。文章は硬いめだけど、方針はゆるゆるです。よろしくです。

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