ぼくは航空管制官 エアポートヒーロー 羽田 ALLSTARS ─クリエーターのこだわりと致命的な技術不足の立体交差点─

2025年5月2日金曜日

switch ゲーム ソニックハワード

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独断と偏見とちょっとしたスパイス 90

ぼくは航空管制官 エアポートヒーロー 羽田 ALLSTARS
─クリエーターのこだわりと致命的な技術不足の立体交差点─







これは自分の中の性癖なんだけど、まずい食べ物を無性に食べたくなる瞬間がある。例えば自分の舌に合わないラーメンだったり、ジュースだったり。正直もうリピは無いかなって思った食べ物や、好き好んで食べる価値が無いと思った食べ物が食べたくなる瞬間がある。こんなのにお金を使うなんてもったいない。頭では理解しているけど、体はやってしまう。そんな過ちを度々繰り返している。他人から好きかって聞かれると、はっきりと「まずい」って言う様にしている。だってまずいだから。それが本心だから。凄く矛盾した事をやっているし、話のネタを作りたくてやっている訳でもない。無意味、無意識なんだけど、それを度々してしまう自分がいる。作品アンチがあえて自分の嫌いな作品を批判する為だけに見るのと心理的には一緒かもしれない。人ってどんなに全うに生きていても、どこかしらの部分で矛盾するから。自分の中の矛盾だと思う。

さて今回取り上げるのは、そんな自分の中の矛盾の一つだ。





今日は『ほくは航空管制官エアポートヒーロー羽田ALLSTARS』を取り上げる。
一般的な知名度は低いものの、20年以上愛されているゲームシリーズがある。それが「ぼくは航空管制官」シリーズだ。(通称ぼく管プレイヤーは航空管制官として、空港を離発着する飛行機に指示を飛ばして、安全かつ効率的な航空管制を行うシミュレーションゲーム作品で、元はテクノブレイン1998年にPC向けソフトとして発売されたのを皮切りに、それから現代まで続いている長寿シリーズとなった。テクノブレインでは『ぼくは航空管制官4』までのナンバリング作品が販売され、その後の3DSやswitchで販売されている「エアポートヒーローズシリーズ」では名古屋のゲーム会社ソニックハワードが開発、販売を行っている。ちなみにこぼれ話なんだけど、テクノブレイン社は『ぼくは航空管制官』をきっかけに国交省からの依頼で航空管制訓練シミュレーター制作したという。そして出来上がったの「ウラノス」で、現実の航空管制官達も元はゲームから始まったシミュレーターを通して訓練を積んでいる。一般人の我々プレイヤーもシミュレーターの元になった作品を通して航空管制官の仕事を追体験できる。とても素敵で、winwinな関係性だと思う。


ヒット続くゲーム「ぼく管」の開発、倒産危機からダメ元で始まった…
いまや航空管制官の訓練にも : 読売新聞オンライン https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20250310-OYO1T50008/

テクノブレイン ウラノス紹介ページ


自分が初めて「ぼく管」シリーズに触れたのは、確かPSPの体験版だったと思う。舞台は羽田だったとはず。不確かな話。分からない事ばかりだったけど、飛行機を離発着させるゲームとして凄く印象に残ったのが始まり。それから大人になって、3DS作品をいくつか遊ぶ。たしか那覇と羽田と成田だったと思う。こちらもうろ覚え。3DSとあって画像がかなり粗いだけど、それでも楽しく遊んだ記憶がある。それからまた数年。久々にこのシリーズが遊びたくなってswitch版を購入。早速遊んでみる事にした。





ゲームは先ほども紹介した通り、プレイヤーは航空管制官となって飛行機の離発着を行う。飛行機に指示を出す事でポイントを確保でき、定められた規定のポイントを超えるとゲームクリアになる。そして、各マップ事にサブミッションが決められている。ミッション内容はゲームプレイを縛るものが多く(移動するトーイングカーを一度も静止させない。等)、サブミッションを達成する事で、より高得点、クリアランクをアップする事ができる。全40ステージ+DLCが15ステージの合計55ステージがプレイ可能だ。


正直ゲームシステム自体は滅茶苦茶面白いだけど、ゲームとしての最適化不足やゲーム会社として根本的な技術力の無さにばかり目が行ってしまい。全クリはしたものの、正直深く楽しめなかった。まず公式サイトで本作のセールポイントにしていたグラフィックは、こだわりが見えるものの飛行機以外のグラフィックの出来が荒すぎて、令和に発売された作品には見えなかった。特に空港のマップからも見える東京の街並み。東京の摩天楼のグラフィックは無いに等しく、今時平地のマップに一部ポツポツと箱の様な建造物が立っているだけだ。大手と比べるのも違うと思うが、PSPのエースコンバット(プレイヤーは戦闘機を操って戦うゲーム)やPS3で発売された『エースコンバットインフィニティ』で描かれた東京マップよりも数段出来が悪い。全体的に3Dグラフィックは良く言ってPS2レベルで、今のゲームに慣れていると厳しいものがある。だってこのゲームが発売されたのは23年。その翌年にはマイクロソフトより現実に模した地球を自由に飛び回れる『マイクロソフトフライトシミュレーター2024』が発売され、その比較対象はより大きな存在になっている。3DSの時からグラフィックが粗いとは思っていたけど、携帯機でグラフィック云々は違うと思っていた。それにswitchってハード自体グラフィックを売りにしているハードではない。だけどこのゲームは羽田空港1マップで定価8000円のソフト。実在の航空会社の飛行機を登場させているとあって、版権料の兼ね合いでソフト価格が上がったのだろうか。しかし価格相応の作品の物を求めたくなる。根本的にソフトメーカーとしての技術力の低さを感じらず負えない。個人的に一番残念だったのが、飛行機牽引車。通称トーイングカーと呼ばれる特殊車両が飛行機の発進時のプッシュバック等に使われるのだけど、プッシュバッグが終わると透明になって消える。消費アイテムと取ったら消えてなくなるみたいな感じで。それが一番残念に思えた。



一方で、飛行機のグラフィックはこだわりを感じる。登場する機体はどれもよく汚れている。一機とし汚れていない飛行機は無い。自分は飛行機について無知だけど、その汚れ方は、たまに乗る電車の汚れとかに近しいものがあって、実際に空を飛んでいると黄砂や排気ガス、大気中のチリ等でこんな汚れ方がするのかと理解した。また飛行機のエンジンが発進時や飛行中、裏から飛行機を拝見すると空気のモヤが見れる。エンジンから排出される空気が高熱で、周りの空気の温度との落差がかなり離れているからこそ見れるだろうね。科学的、技術的知識が不足しているからこそ、これ以上詳しい事は書けないけどさ。そういう細かいこだわりは見ていて好きだった。やっぱり飛行機がメインのゲームとあって、飛行機に対するこだわりは感じられたのは大きいと思う。またマップをクリアする事に、飛行機を見れる視点が増えていく。羽田空港付近の公園視点というものもあって、恐らくかなり現実に模して作ってあるのだろう。結局「リアル」って、文字通り写実的に描く事もリアルなんだけど、素人にリアルだと錯覚させる事もまた「リアル」なんだと思う。






3DS作品って、風向きの変化がステージ事に固定である一方。ランダムでは無いからこそ、初見殺し的なマップで多くの減点。みたいな事があった。風量と風向きによっては飛行機が安全に離着陸できないという事での減点。ポイントがガンガンマイナスされる。そんな理不尽は本作には無い一方で、サブミッションによる縛りプレイである。むしろサブミッション縛りがあるからこそ、ゲームはゲームとして成りなっている様に思った。巨大空港とあって、本作難易度は簡単。飛行機の離発着するゲームにおいて、滑走路が4つもある羽田空港は、ゲーム内では交雑の緩和が容易だ。現実の羽田空港が世界第3位と呼ばれる程の超過密空港で、平均すると一分間に1.5機が発着する計算になるらしい。その過密っぷりをゲームに上手く落とし込めていなかった様に思う。

羽田事故背景に「過密ダイヤ」指摘も 世界3位の発着1分に1・5機
産経新聞より






基本的にケアレスミスにだけ気を付ければゲームオーバーにはなりにくい。そして難易度も簡単とあって、ゲームが単調で変わり映えのしない。急患による飛行機の緊急着陸や、海上保安部の飛行機の緊急出動もDLCを除けば1マップしか無く、ステージ事の変化は乏しい。高難易度で遊びたかったからDLCの高難易度パックを買って遊んだけど、それでも満たされなかった。そして個人的にこのゲームの一番ダメなところは、リアルスケールでゲームが設計されている事。例えば3時間管制を行うステージでは、リアルタイムで3時間遊ぶ事になる。基本的なマップでも1時間から1時間半が普通としんどい。リアルスケールの弊害として、現状指示を出せる飛行機に全て指示を出し終ると、ゲーム中何もする事が無くなってしまい、虚無みたいな時間を過ごさなければならない瞬間が出てしまう。無論早送りする事も出来ないし、唯々次の飛行機が発着するまでの間、ボーと待つしかない。ホームページでこのゲームの売りの一つに約50時間に迫るプレイ時間とあるのだけど、その大半は待機。令和のゲームとは思えない程のタイパの悪さ。正直娯楽作品にタイパが求めたくないけど、このタイパの悪さはゲーム作品として致命的。人におすすめできない。時間が解ける様なゲームだったらタイパが悪くてもいいけど、このゲームの場合って、時間を使う事を強要されている感じ。1ステージ遊ぶ事に覚悟がいる。やっぱり30分で1ステージ遊べるぐらいの手軽さがほしいし、リアルスケールで遊びたい人や、サクッと遊びたい人様にゲーム内時間をいじれるようにして欲しい。ゲームは好きだったけど、もう遊びたくないって気持ちが強くなっている。


ゲームのUIはかなり良くなっている。比較対象が3DSだからアレだけど、過去作品よりも分かりやすく、そして遊びやすくなっている。これは凄く好印象だった。ミスすると数十分のプレイ時間がパーになるゲームシステムにおいて、ミスを大きく軽減していくれるUIはありがたい。情報量も多く、3DS時代はスポットと言われる飛行機の入場口を間違えてゲームオーバーになる事が多かったから、そういう凡ミスを減らせるのは凄くいい。正直難易度を上げると考えた時に、もうUIのon/offが出来る事から、これを縛って遊ぶか迷った事も。それぐらい初心者にもやさしくなっている。またこのゲームの魅力って、飛行機を効率的に離発着させた時の爽快感だと思う。飛行機が空港上に多数ある中で、安全に、そしてゲームオーバーにならないように意識しながら、最短で飛行機を上げたり、下ろしたり。このゲームの唯一無二なセールポイントはやっぱり遊んでいて楽しい。ゲームのクオリティは低いし、価格は高いし、時間もバカみたいに奪われるけど、このゲームシステムはたまらない。本当はスコアアタックとか、無限モードとか、そういうゲームぽい事がやりたいのに、それが出来ないのがもどかしい。






もう最低5年は遊びたくない。やり尽くした。本当はあとDLCが二つ残っているけど、そこまで遊ぶ気力はもう残っていない。もうこのゲームに対してとても疲れた。もういいだろう。ゲームとしてタイパ、コスパ共に最悪で、グラフィックも価格と釣り合っていない。クリエーターのこだわりは感じる一方で、凄いゲームがボンボン発売されている令和の世において、ゲーム会社としての技術不足の無さがはっきりと露呈してしまっている。でも、ゲーム自体は楽しい。飛行機を自分の指示一つで離発着させて、効率的に航空管制を行った時の爽快感もまた忘れられない。遊びたくない、遊びたくないって思いながら一方で、また遊びたいって思っている自分もいる。これは自分の中にある矛盾の一つだ。ゲームとしては何一つとしておすすめできる程のクオリティではない。だけど、貴方の傍にも沼はあるという事だけは覚えていて欲しい。


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毎週金曜19時更新。 目に留まった創作物にレビューを書きます。批評家では無いので、凝った事は書きません。文章は硬いめだけど、方針はゆるゆるです。よろしくです。

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