独断と偏見とちょっとしたスパイス 92
小悪魔教師♡サイコ(合田蛍冬版)(原作三石メガネ)
─ネット広告をジャックした伝説のサイコパス教師─
Amazonより引用
ネットの漫画広告ってどう思う。私は正直苦手かな。もちろん漫画広告は一つの導線。毎日膨大な数の作品が発信されているこの世界で、作品を知る機会はあまりにも限られている。限られているからこそ、一つの導線としてネット広告はとても合理的な判断だと思う。しかしだ。作品の切り抜く方が雑で作品の魅力が伝えられずに、逆に作品そのものにヘイトが向いてしまうパターンや、成人向け作品が無秩序に宣伝され反感を買うケースがSNSで散見している。私はクリエーターが滅茶苦茶やっているようなカオスな状況が好きだ。だけど今の広告って、作品を見てもらう。というよりも作品に嫌ってもいいから無理やり認知させるかのような、そんな強引さを感じてしまう。食わず嫌いも増えてしまう。だから作品への導線づくりの為にはどうすればいいのか。広告会社には、もっと考えてみて欲しいと願っている。私は今時のショート動画で作品紹介なんて出来ないから、オールドメディアなブログで作品への導線づくりに励みたい。私のブログを切っ掛けに作品を見てもらえる人が一人でもいれば、私は嬉しい。
さて今回とりあげるのは、一時期ネットの漫画広告で見ない日は無い位宣伝され、7億円もの売り上げをたたき出したが、出版社の不誠実さにより連載が休止になったある作品を取り上げたいと思う。
今週とりあげるのは小悪魔教師サイコ (合田蛍冬版)。原作は三石メガネ先生が投稿したオンライン小説。漫画版は他にも同名タイトルのWEBTOON版が配信されている。本作は一時期はネットサーフィンしたら見かけない日は無い位広告展開がされた作品。都市圏に住んでいない地方民にとって、ネットの広告は主要駅の広告以上の価値がある。具体的な内容が知らなくても、作品は知っている。そんな状態だった。
しかし、出版社の不誠実によって作品は連載休止の状態。当ブログでは基本的に連載中の作品は取り扱わないと決めているが、この作品については連載再会の可能性が低いと私は判断したので、このブログで取り扱いたいと思う。
原作者の三石メガネ先生は漫画原作や小説の執筆を精力的に行っている。私は初見。合田蛍冬先生はエブリスタで『ドクムシ』を連載していた方として知られている。エブリスタは懐かしい。初めてネットで課金したサイトだったし、一般ユーザーによる漫画投稿も可能で、中高生の頃よくお世話になった。
この作品を読むきっかけになったのは、最近WEBTOON版の広告を見るようになったから。そこで先に連載していた合田蛍冬版を読んだ訳だ。Amazonの本読み放題サービスの対象になっていた事も大きい。訴訟問題に知っていたけど、連載は休止のままになっていたのは知らなかった。その後ネットのニュース記事や合田先生のブログ、他漫画家の意見ツイートを見て、その内容の酷さにあきれる。そして、もう漫画の続きは見れないって思った。
物語は私立睦月高校に美人教師で主人公の葛西心春が赴任する事から始まる。彼女が任されたクラスは問題児が多数在籍する学級崩壊したクラス。激しいいじめも起きてるし、前任の教師は自殺未遂まで追い込まれてしまう程。案の定葛西に牙をむく生徒たち。しかし、彼女はそんなぐれた生徒を遥かに上回るサイコパスだった。彼女はその清楚な見かけと言動の裏には、どす黒い狂気が隠れていた。殺す事も厭わない葛西の黒い教職ライフが始まる。
この作品はやっぱ勿体ない。これは個人的な意見だけど、基本的に漫画って最初はあんまり面白くないって思っている。登場人物についてよく知らないし、物語の世界観も分からないから。そしてこの漫画ってエロとかグロとか分かりやすい刺激で読者を集めようとしている節を序盤は特に強く感じた。エロやグロって行きつくところまで行ったら芸術になるけど、基本はやっぱり安っぽくなる。まあネット配信が主体の漫画だから、まあそうだよねって割り切って読んでいた。
だけど主人公が異動になって、舞台が若草市立氷坂高校になってから面白くなったのよね。特にサイコパス葛西VS自称サイコパス生徒・良村篤也のバトル回は光ってた。この漫画一番の名勝負。個人的に結末まで含めて一番すっきりした。やっぱ偽物が本物に駆逐される展開って好きなのよね。葛西も凄い勢いで殺そうとするし、めっちゃイキってた良村が葛西にあきれられ、その後葛西の本物具合に怯え、最終的に自分のした事の報いを受ける。オチまでも含めて面白かった。やっと葛西のキャラクターの理解できたし、漫画ってある程度進むとキャラクターに魂が宿る瞬間が必ずあって、作者の便利な人形から独立して動き出す様な、そんな瞬間がある。それが見えてきた時に連載が休止。それがとても残念。下品な話だけど、出版社が誠意をもっと見せていれば、連載が続き、出版社と作家は莫大な富が入った。そんな「金のガチョウ」を殺してしまった出版社ぶんか社の責任は大きい。
ただ個人的に葛西がサイコパスかと言われるとちょっと疑問。確かに自分本位だけど、サイコパスというよりも自分に興味があるものに対する知的好奇心が異常に高く欲望に忠実で、一方他人に対する関心が薄い、発達障害の人って感じがするのよね。創作上のサイコパスなキャラと違って、少なくとも一般的な会話や交渉が出来る以上、サイコパスに振り切れていない感じもする。そもそも「相手を殺す」という選択肢があるというだけでサイコパスって言ってたら、メキシコのギャングカルテルメンバーはみんなサイコパスになってしまう。でも実際はそうじゃないと思いたい。やっぱサイコパスキャラってどうしても結婚できない人並みに理想が高くなってしまう。それぐらいサイコパスという言葉には神秘性があるのは確かだ。
ただ、ゲーム実況動画で本当に人の心が無いんか。って言うぐらい狂気じみたサイコな遊び方している人が結構いるから、そういう動画で感覚がマヒっているかもしれない。
訴訟については、ねとらぼの記事が詳しい。
売上7億円超の漫画『小悪魔教師サイコ』作画家・合田蛍冬氏が出版社を提訴 同時期に同一原作の後発漫画が出版されトラブルに
売上7億円超の人気漫画『小悪魔教師サイコ』作画家・合田蛍冬氏が出版社を提訴した訴訟が和解 同一原作の後発漫画が出版されトラブルに 出版社は謝罪
一通りの経緯とその結末は上記の記事を参照。
ぶんか社の謝罪コメント
お詫びと休載のお知らせ
合田先生のブログ 裁判の様子が克明に描かれている。
合田蛍冬のナラ日記
一通りの情報を見て思う。本当に酷い。そして漫画家がコミカライズ作品をやる事がどれだけリスキーなのかが分かる一幕。日本漫画界の闇だよね。漫画ってどこまで行っても商売だから、商売っ気を出す事自体は当然。でもここまでクリエイターに不義理して、読者に水をぶっかけるような振る舞い。ぶんか社に対していい印象を持てるわけないよね。
最悪。
こういうヒット作品がいわゆる「大人の都合」で崩壊していく様は『けものフレンズ』を思い出す。ファンとクリエイターを出版社はもっと大事に扱って欲しい。ぶんか社と合田先生の信頼関係が終わってしまった以上、連載再会の可能性は極めて低い。むしろぶんか社では連載再会しないで欲しいまである。それぐらい今回の不義理の代償は重い。
少なくとも連載再会するまでは、本作品はおすすめしません。
作品どうこうよりも、場外での内容に強い不快感を覚えるはずだから。
公式サイトは無かったので、Amazonの第一巻のURLを乗せてます。Amazonでは全20話配信されています。
小悪魔教師サイコ (1) (COMIC ヤミツキ)
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