サイバーパンク桃太郎  Rootport  ─テクノロジーが生んだ新たなる可能性─ 

2022年10月14日金曜日

Rootport 漫画

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独断と偏見とちょっとしたスパイス 36

サイバーパンク桃太郎  Rootport
─テクノロジーが生んだ新たなる可能性─ 

Rootportさんのツイートより引用

ラスト制作の世界にもいよいよAIが進出した。

今年発表された自動イラスト作成AI『Midjourney』が制作したイラストの数々。
それは今までのAIイラストとは一線を画す物だった。

今までのイラスト作成AIは、
入力したワードの大まかなイメージをぼんやりと再現した。
抽象的でざっくりとしたイラストが多かった。

とてもプロと肩を並べるクオリティでは無い。そういう印象だった。

しかし、このAIは違う。

サービス開始と共に、
鮮明に作られたイラストの数々がTwitterで多数投稿された。
そのクオリティの高さには衝撃を受けた。

精密に、そして大胆に。
無数の失敗と成功を学べるAIの強みが現れていた。

本格的にプロの領域に、AIが到達した事を如実に示したトピックがある。

画像生成AI「Midjourney」の絵が米国の美術品評会で1位に
優勝者「物議を醸すことは分かっていた」

アメリカのファインアートコンテストで
「Midjourney」が制作したイラストが、1位を取ってしまったのだ。
ここでも、「人間の仕事を奪うAI」が出現してしまった。


これからのアートシーンは一体どうなってしまうのか。
AIの功罪とは。人間の作品は淘汰されてしまうのか。

と言った新しい問題についてはこの場では置いといて、
今回は『サイバーパンク桃太郎』が見せた可能性の話を綴りたい。




『サイバーパンク桃太郎』は、
作家・商業誌のマンガ原作者として活動されているRootportさんが
Twitter上で公開された一連の作品だ。現在第一章が完結している。 

この作品について以下のツイートを引用する。
(とりあえず作ったのはここまでです) (飽きるまで続けます) (AI作画の実証試験です) (反省点や考察は別のスレッドにまとめます)
Rootportさんのツイートより引用。

特徴的な点としてすべての作画が「Midjourney」によって描かれている。


作画は全てフルカラー。

短期間にフルカラーの作品が量産できる。
という事実にまず驚いてしまう。
  
ページ一枚一枚の作画コストは高い。
もしもこれが人力だったら相当数の時間がかかるだろう。 

キャラクターの造形も凝っていて、何もかもが桁違い。
絵の上手くない漫画家というのも存在するが、
絵を見た時の感動はそれを遥かに上回るものだった。

ネオオカヤマのサイバーパンクな街並みと和風の融合。
複雑で不気味なマシーンの造形。

人間が膨大な時間をかけて作り上げていくデザインを、
AIは短期間でそれを成し遂げていく。

造形物に対するデザインはAIの凄まじさを感じてしまった。


マンガ原作者は絵が描けない事が多い。
故に作画担当とコンビを組み活動をされている。

しかし、アマチュアだったり、
周りに知人がいないとコンビ結成とは中々いかないもの。

原作者のアマチュア時代の作品を見ると、
作画担当者不在の為に素人の落書きレベルの作品も散見している。

しかしだ。この技術を使えば、そんな作画担当不在の人間でも、
ハイクオリティな作品を発表する事ができる。

そんな未来を予見させるものだった。

ビジュアルの力が作品の評価に直結するマンガにおいて、
アマチュアで絵を描く力が無くても、
根気さえあればハイクオリティな作品が発表できる。

作品完成までの敷居が下がり、そして裾野が広がるのは、
一読者としては喜ばしい事だと思う。



絵はリアル調で、作品はアメコミの様な印象を受ける。

AIで一コマ一コマ作成している関係上、
キャラクターの外見はいまいち安定しないが、
個人が識別できるぐらいにはキャラが立っている。

絵で気になったのは人物の表情。

この表情の乏しさは、
AIが未だ人間の表情を表面的にしか表現できない事がわかる。

特に気になったのが笑み。
綺麗なんだけど、「笑み」が持つ複雑さが表現しきれていない。


人間の表情は喜怒哀楽だけでは無い。もっと曖昧な表情をする事だってある。
それこそ水性絵具で色を混ぜ合わせたかのような色の様に。

物事に集中し、真顔になった表情を怒っているとは言わない様に、
楽しくて笑うのでは無く相手をあざ笑う笑みや、微笑、大笑いと言った、
「笑み」に対するAIの理解がまだ足りていないように思う。

人間の複雑な心理描写が如実に表れる表情。

その表現力を高まった時、AIの絵はもっといい絵に化けるだろう。



単純に話が面白いのはずるいと思う。
話のクオリティ的に、思いつきで書けるような内容じゃない。

童話桃太郎の沿いながらも、
サイバーパンク要素をマシマシにした漫画でSF設定もゴリゴリ入っている。
『攻殻機動隊』辺りが好きな人ならば、楽しんで読めると思う。

上手く伏線を張り、上手に回収する。
物語作りのお手本にしてもいいぐらい丁寧な展開だった。

わりと気になる謎とかも残っているので、
もしも続編から見れるならば見たい。




々な問題を抱えているAI。
しかしAIを駆使する事で、ここまで面白い作品が生まれたのも事実だ。

これからの未来。AI技術をマンガ業界は取り入れる事で、
よりハイクオリティな作品を提供する事ができる。明るい可能性を感じた。

むろんAI技術によって、マンガ業界の「終わりの始まり」が来るかもしれない。

しかし、テクノロジーが完成している以上恐れていても始まらない。

私はこの技術が福音になるよう信じて、次の時代を見てみたいと思う。


Twitter上にて発表されています。お早めに!



来週は以下を取り上げます。

鳥島漂着物語─18世紀庶民の無人島体験 小林郁  成山堂書店版
─江戸時代中期の無人島サバイバルとは─

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