独断と偏見とちょっとしたスパイス 53
不思議な国の数学者
─名門校の落ちこぼれと脱北警備員の秘密の授業─
映画.comより引用
数学は好きでした?
私は嫌いでした。数学。
もはや何がわからないのかが、わからないという末期症状の1人でした。
数学の怖い所は、一度躓くともう全体の理解がおぼつかなくなる所だと思う。
小学校の算数が出来ないと、中学校の数学が出来ない。
中学校の算数が出来ないと、高校の数学が出来ない。
という具合に躓くタイミングが早いと、
数学の問題を解く方法とその手段が無い。
というどうしようもない状態に陥ってしまう。
それだけ数学は基礎学習は不可欠だという事。
「積み重ね」や「努力」という言葉が嫌いな私にとって、数学の壁は高かった。
だから当時は、
「数学何か出来なくても生きていけるし。」という負け台詞吐いてました。
これって結構文系の人は多いじゃないかなって思う。
一方でこれは100%偏見なんだけど理系の人も理系の人で、
「文学なんて無くても生きていけるし。」って思っていそう。
理系や文系という枠組みがある内は、こういうやり取りは続くと思う。
ただ史学をやっていて思ったけど、
歴史をより学ぶ為には理系に知識も必要な事に気づかされた。
文系や理系。という垣根に拘る時代はそう近くない未来に終わるかもしれないね。
さてそんな数学嫌いな私でも、
数学を前向きに「学んでみたい。」と思える映画がありました。
それが今回取り上げる作品。
『不思議な国の数学者』です。
あらすじ
名門私立高校に通うジウは、その成績の悪さから担任に転校を勧められていた。
特に数学は絶望的で、数学担当でもある担任も呆れかえる程。
ジウの家は貧困層で母子家庭で家族は母と2人。
元々富裕層出身のクラスメイトが多くいる学校とあって、
クラスメイトや学校にもあまり馴染めずにいる。
そんなある日。
高校の寮に住むジウは、その場の流れで寮室へ集まったクラスメイトの為に、
深夜に無断外出を行い、酒やつまみを買いに行かされる。
その時に警備員・ハクソンに捕まってしまうが、
共犯のクラスメイトは決して漏らさなかった為に、一か月の退寮処分を受けてしまった。
母に心配をかけたくないジウは、家に戻る事も出来ず、
街を当てもなく彷徨い、雨に打たれながら校内の旧校舎へとたどり着く。
そこで自分を捕まえたハクソンに見つかってしまうが、
どうにか警備員の詰め所に泊めてくれる事になった。
ハクソンは数学が趣味で、時間がある時は数学問題を解いている。
ジウが寝ている内に、ジウがバッグから出していた数学の宿題をハクソンは解いていた。
後日の数学の授業中にその事に気が付いたジウは、
ハクソンに数学を教えて欲しいと何度も頼み込みんだ。
ハクソンは脱北者で気難しい性格。喋り方もぶっきらぼうで、
生徒達はそんな彼の事を「人民軍」と馬鹿にしている。
最終的にはハクソンは折れて、
いくつかの条件を出しつつも旧校舎の奥で秘密の授業が行われる事になる。
ジウの運命は。そしてハクソンの過去とは。
約1年ぶりに行きましたよ。Denkikan(電気館・熊本市内にあるミニシアター)。
そこで上映されていたのがこの作品。
元は韓国で制作された映画で、本国での公開は2022年。
日本においては2023年での公開となりました。
この映画の凄い所は、
- 学園物
- 社会問題
- 数学
この3つの要素をバランスよく取り上げて、エンタメへと昇華した所だと思う。
学園物要素が強すぎると青臭くなるし、
社会問題への提起は物語をシリアスをし過ぎてしまう。
数学を深く扱えば扱う程に、私の様な文系は話に置いてけぼりになる。
比重を間違えれば作品が崩れてしまいかねない。
そんな要素を取り入れて、誰もが楽しめる映画に仕上がっています。
テンポよく、コミカルに、でもラストの展開は泣ける。
お勧めの映画です。
南北問題や韓国の過酷な受験戦争。
脱北者が韓国社会で冷遇されている現状と、学園ドラマで扱うには重すぎる内容なのに、
それを問題提起すると共に、エンタメのアクセントにしてしまう。
やっぱり社会問題を取り上げてしまうと、
どうしてもクリエイターの政治思想だったり説教臭くなったりして、
純粋に娯楽作品として見れなくなるから、「社会派」といわれる作品には苦手意識はある。
正直問題について知りたければ、書籍かネットの記事を読めばいいかなって思っていた。
だからここまで社会問題を含みながらも面白い作品が生まれるとは思わなかった。
特に脱北者の生活の過酷さには考えさせられた。
よくよく考えればわかる事だけど、韓国もまた学歴社会。
そんな社会に適用できる学歴やスキルもほとんど無いまま社会に参加する。
地縁も少ないとなると考えたくもない。
私達は日本人であって韓国人では無い。
つまり、当事者では無いという事は考慮する必要はあるだろうけど、
社会問題をエンタメにする。
そしてわかりやすく見る人に伝えて、問題提起する。
この手腕は凄いと思った。
学園物として見ても結構好き。
ジウには親友と言えるほどの友達はいない代わりに、幼馴染系ヒロインがいる。
クラスメイトのボラムだ。 とにかくカワイイ。
怒ったり笑ったり感情豊かで、時にはおせっかいな彼女はジウを困らせる事も。
でもいい感じにラブコメやっている。
この辺のノリはジャンプとかの少年誌系のノリ。
社会問題等のシリアスな話題を挟む一方で、このライトさは清涼感があっていい。
一方で親に受験の為に好きだったピアノ教室を辞めさせられたり、
ジウと仲良くする事を咎められたりと、親との関係に闇を感じさせられる。
ボラムとハクソンが円周率を使ってピアノを弾くシーンは本当に好き。
他のサイトでも話題のシーン。是非とも見て欲しい。
そして、数学。
私は数学に対しての知識は無い。
だからあまり語る事は出来ないけれど、
数学を解くには「勇気」が必要だと時、問題を解く過程こそが重要だと語ったハクソン。
映画を通して受ける彼の授業。
私はその数式の意味はわからないが、数学への想いはわかる。
数式を美しいと語るその心も。
ハクソンやジウが、ああやって数式を並べ問題を解いていく。
その楽しそうな姿を見ると、数学を学びたくなった。
この映画を見る1時間前までこの映画の事は全く知らなかった。
大学の授業終わりに時間があったから、久々に電気館に行こうって思ったのが始まり。
PV見たら、この映画。直観で面白そうに思えて見に行った。
見終わった時に思った。見に行って正解だったと。
実は韓国映画をちゃんと見たのはこれが初めて。
ローカル問題を取り上げながら、楽しく見れる映画だったから驚いた。
やっぱりアンテナはもっと広く張らないといけないと反省しています。
ジウとハクソンの年齢を超えた友情と北朝鮮・韓国の国家間の陰謀。
ジウとボラムの甘酸っぱいラブコメに、脱北者に対する差別。
色んな要素を挟みながら、万人向けで誰にでも進めやすい。
そんな作品ができるとは思わなかった。
とてもいい作品です。
良かったら、見て欲しいと思います。
公式サイト
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