独断と偏見とちょっとしたスパイス 82
未解決事件は終わらせないといけないから
─浮かび上がる「真実」と痛々しい「優しさ」─
steamより引用
※ネタバレあり。プレイする可能性があるならば、ブラウザバック推奨です。
最近ゲームの情報を得る事が基本ネットメディア経由の事が多くって、何となく寂しいというか。改めて時代の流れを感じる。自分の子供の頃ってまだWi-Fi黎明期でネット環境がそこまで普及していなかったし、ファミ通やニンドリみらいなゲーム専門誌を買って読む程みんなお金を持っていなかった。だからこそ仲間内での口コミこそが最大の導線だった。それに自分の目利きを信じてゲームショップで買う事も出来た。レビューサイトやSNSが今ほど完備されていない時代だからこそ出来た博打だったと思う。まだ当時はまだゲームコーナーも今よりも格段に広く作られていて、ゲームを探す楽しさもあった。でも今は違う。ネットで全てが完結出来てしまう。もちろんマイナーゲームを遊ぶ事が多い自分にとっては良い時代。「発見」も多いし、「外れ」の作品を引かなくてもいい。ただあの頃に対する哀愁も感じている。
今回取り上げる作品も偶然ネットで見つけた。
元々はnoteに書かれたレビューを切っ掛けに本作を知った。ミステリー要素の強い作品との事で、途中で読むのを辞めて情報をシャットダウン。そしてゲームをプレイしてみる事にした。はっきり言って「当たり」だった。人に紹介したくなる様な、そんな素晴らしい作品だった。願わくばこのレビューが「導線」になる事を願いながら、今週は本作を取り上げたいと思う。
今日は『未解決事件は終わらせないといけないから』を取り上げいと思います。
プレイ時間はおおよそ2時間半ぐらい。映画1本分ぐらいの短い作品です。
ダウンロード限定で、switch版は990円。
プレイヤーは未解決事件である誘拐事件の調査を進め、事件を終わらせるのが目的。事件や証言者の事前情報は無く、文字通り情報0の状態から手探りで事件を調べていく事になる。本作はSNS。Xのポストみたいな吹き出しが並んでいて、関係者の事件の証言が並んでいる。証言の中にはハッシュタグをついていてい、それをタッチする事で新しい証言が公開されていく。プレイヤーは各証言を集めながら、誰がどのタイミングで話したのかを推理しながら証言を整理する必要がある。正しくセリフが整理できると、その証言の時間が公開されてポイントが溜まっていく。5ポイント溜まるとプレイヤーは鍵を入手する。鍵は一部の証言を開示する時に消費アイテムで、時折使いどころを考えさせられる場面もある。
ゲームとしては地味ながらも、事件の謎が徐々に明かされていく中で自分の中であった推理が二転三転し、その中で一喜一憂しながら浮かび上がる「真実」と痛々しい「優しさ」が見え隠れしていく。
実際のゲーム画面 ハッシュタグは青く表記されている。
物語のテーマは「隣人愛」だと思う。辛い現実と最中、登場人物達は真実に向き合い、助け合う道を選んだ。この痛々しい優しさに胸が苦しかった。「文化戦争」と称される程に価値観の分断が深まり、戦争も、殺し合いもしていないのに憎しみが募り、SNSには怒りが満ちている時代。そんな時代に敢えて「優しさの連帯」を訴えた作品のメッセージが深く心に沁みた。こんなにも優しい物語が待ち受けているとも思わなかったから。
エンディングは2種類。空間も登場人物も状況も異なるエンディング。どちらも物語の印象が変わってくる。エンディング時の表現の方法は同じなのに、こうも違うと何とも不思議な感覚。どちらが正規ルートとかも無く、どちらが正解でもないけど、特定の条件を達成しなくても見れるエンディングの方が好き。このエンディングには様々な謎は残るし、物語の整合性を考えると特定の条件を達成した時に見れるエンディングが納得できるのだけど、オープニングからの物語の連続性があって、自分はこっちの方がしっくり来た。
ゲームの難点は、switch版の操作性がとても悪い事。恐らくマウスでプレイする事を前提に作られていた作品なんだと思う。switchのコントローラーで遊ぶには不便だった。証言を整理したり、タグをタッチするのも一苦労で、証言をスクロールするにも操作性の悪さによって自分の思い通りに画面を動かせない。正直ストレスを感じる。
冒頭の会話シーン
もしもまだプレイした事が無い人は是非ともノーヒントで遊んでみて欲しい。全くの手探りの状態から未解決事件に関わり始める序盤、そして謎が新たな謎を生む霧の様な中盤、そして謎が全て明かされる終盤。ミステリー小説の王道の様な展開をその手に体験すると共に、物語の根幹にある「隣人愛」というテーマ性が、争いの絶えない今だからこそ深く刺さるものがありました。
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