『ライフイズストレンジ』DONTNOD/スクエアエニックス

2018年5月8日火曜日

DONTNOD PS4 ゲーム スクエア・エニック

t f B! P L
世の中の創作物にあーだこーだ言う。
『独断と偏見とちょっとしたスパイス』

第4回は迫られる人生の選択肢から最良な物を信じ、選択する。
『ライフイズストレンジ』DONTNOD/スクエアエニックス

タイムスリップやタイムリープはやっぱりSFの王道。ロマンだ。夢のあるタイムスリップ物だと説明不要の長寿アニメ『ドラえもん』や、
もはや近未来として描かれた2015年も過去になってしまった『バックトゥザフューチャー』シリーズだってそうだ。もちろんその物語の中でタイムスリップがもたらす危険もちゃんと描きながらも、その夢を描いた作品達だ。

タイムリープが結果として不幸な結末となってしまった作品だと、
タイムリープを使った楽しい日常が暗転、友人を救うために地獄のタイムリープの繰り返す中で主人公の精神が摩耗していく『シュタインズゲート』。『時をかける少女』。

はたまたコールドスリープから目覚めると200年後の世界だった。(『fallout4』)なんて変化球も。

時間を旅する小説だと大好きな本の一つ『クロノス・ジョウンターの伝説』や『遠い国のアリス』なんてものある。

ちなみにタイムスリップは自分の体その物が過去や未来に行く事。つまり、その時間軸に過去や未来の自分と合わせて2人の自分が存在する事になる。タイムリープでは、未来や過去に遡ろうが自分は1人しかいない。という特徴があるとのことだった。ただ、これには厳密な解説は無いらしい。これから現れる未来のクリエーターが作っていくのかもしれないね。


『ライフイズストレンジ』はアメリカの女子高生がちょっとした事から日常のトラブル。はたまた人の生死までもタイムリープの能力を用いて選択する。どこか儚い、青春ミステリーの要素を盛り込んだSFアドベンチャーゲームだ。

主人公はマックス。アメリカだからこそ根暗キャラ扱いされるのだろうけど、選択肢によっては「豚みたいね 床で食べたら」なんて言うぐらい多少キツイキャラにもなる感じ。ただ、日本だったら基本的には善人で誰からも好かれるタイプ。クラスではそれなりに存在感があるとみた。ちなみにメンタルはかなり強い。自撮りが趣味。彼女が得た力が、そう。タイムリープだ。この能力を使うとわずか数秒から1~2分だけ時間を巻き戻したり、その力を応用して瞬間移動をしたりする事もできる。
日記が凝っている。かわいい。

物語を彩るもう一人の人物。今年発売の前日譚『ライフイズストレンジビフォアザストーム』では主人公となった、パンク系少女・クロエ。父の死とマックスの引っ越しによって彼女は変わった。トラブルメーカーで初登場の場面では1度死んでしまう。てか割とよく死ぬ。真っ青な髪とカラフルなタトゥーをしたクロエは、頭の回転が速く冴えている。ただ、メンタルはかなり脆い。事故死した父とマックスに依存している部分がある。

この2人が青春を楽しんだり、クロエの親友・レイチェルの失踪と学校で起きる数々の事件を調べていくにつれて繋がる線。そして、時としてまさに白昼夢のごとく現れる大竜巻。学校に蔓延る事件の全容とは、そしてこの大竜巻とは。マックスとクロエ。選択の果てに、どのような結末を迎えるのか。


物語はシンプルながらも二転三転し、先の読めない。
明らかにミスリードを誘うキャラがいて、事件の全容は何か。誰が犯人で誰が正しいのか。考えるのも楽しい。タイムループ物ではありがちな、マックスやクロエ達のどんどん変わっていく可能性の未来を見ていくのも好き。その時のいくつもの選択が、一体どんな可能性があったのか。展開が続くにつれて結局なかった事になる未来だけど、
この未来が何か愛おしく、切ない。

表面上は一見明らかに悪人のような人間も、よく掘り下げられていているのもいい。表面上は嫌な奴でも、物語が進むにつれてその不器用な内面が見えてくる。もちろん選択にもよるが。意外と同情すべき点や、不器用さが見れ隠れしている。記号的なキャラでは無く、それぞれ血の通ったキャラだからこそ物語が映えてくる。

元々はフランスのゲーム会社が作った洋ゲーなんだけど、物語が親しみやすい。やっぱり海外の映画や小説を読んでいると、起承転結の仕方に違和感を感じたり、言動が理解できなかったりする場面はどうしてもある。その国のお約束が理解できないから、思う存分に楽しめない。この作品は違う。単純先の読めない展開がとにかく面白いのもあるのだけど、小さなな事から小さな事まで本当に様々な事を選択していく内に、マックスやクロエに不思議な親近感が沸いてくる。キャラの見せ方が上手いからなんだろうけど、漫画とか小説を読んでいる時のあの没入感。それに似ているかな。段々2人が赤の他人から「なんだかほっとけない友人」に、そう思えてくる。

そして、上手くマックスの独白を選択の合間に挟んだり、プレイヤー自分が選択を「考える。」事で、「マックスだったらこうする。」みたいな小説みたいに想像しながら、主人公を思う通りに動かす。ある意味小説とかが好きな人には堪らない。アドベンチャーゲームやムービーの多いキャンペーンモードでありがちな、プレイする場面が次の映像を見るための作業なりがちで、次のシーンまで間が開くから物語のテンポも悪くなる。ゲームそのものが抱える問題を上手く突破した、素晴らしいゲームだと思う。

そうそう、アメリカの女子高校生を通してアメリカの高校を体験できるのも良かった。「アメリカの高校ってこんな雰囲気なのか。」とか、「落書き多すぎ。」とか、色々思った。ちょっとした異文化交流の気分。掲示板のポスターや落書きみたいなマップを彩る小道具も中々凝ってただ探索するのも面白い。



ただ、残念だったのがあるエンディング。
そもそもエンディングは2つしかない。マルチエンディングの用に見せかけて、実はバタフライエフェクトにより、すべては収束してしまったのか。なんてSFチックな勝手な想像もできる。それは良いとして、もう1つのエンディングと比べて展開が明らかに雑すぎてがっかりした。もう1つのエンディングは良かったから、余計「正規ルートはこちらですよ。」って暗示させられているようで嫌だった。あまり感傷に浸れない、あの素っ気ない終わり方。
もう少しいい締め方があったと思う。

後絶対パッケージで損している。


角川文庫や東京創元社文庫辺りで小説として発売されてもおかしくないと思う。ミステリーのスリリングさとSFの不条理さ。そして、学園物のような爽やかさ時と儚さを挟みながら、結末へと迫る。この塩梅が丁度いい。ゲームや小説の良い部分を良い所取りをした、表現の仕方にも脱帽だ。今動画サイトを見ればエンディングまでの実況プレイが見れてしまう。

だけど、このゲームについては最後まで自分の手で遊ぶ事をお勧めする。
あの没入感と面白さは実況動画からでは決して楽しめないだろうから。
選択する楽しさをゲームから楽しんでもらえれば幸いだ。


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毎週金曜19時更新。 目に留まった創作物にレビューを書きます。批評家では無いので、凝った事は書きません。文章は硬いめだけど、方針はゆるゆるです。よろしくです。

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