『スラムダンク』井上雄彦

2018年7月14日土曜日

井上雄彦 集英社 少年ジャンプ 漫画

t f B! P L
世の中の創作にあーだこーだ言う。
『独断と偏見とちょっとしたスパイス』

第8回は、90年代に神かかった少年漫画。その2。
『スラムダンク』


ジャンプの作家さんに特にありがちな事な流れなんだけど、
ジャンプで大人気連載作が終わると間を開けて青年誌でその続編を連載開始。というあの流れ。作家さんが「ああ、新作が上手く作れないから過去の遺産に頼るしかないんだな。」って思われ、見切られる。見切る気持ちもわかる。しかしこればかりは仕方がないよね。結局の所漫画家なんて、出版社とコミックの販売冊数と印税が収入の不安定な職場。昔の絵かきのパトロンのような関係は漫画家に限っては聞かないし、多少は変わったとしても今ほど収入を得る手段が少ないのだから。でも、真面目に高橋よしのり先生が東北のマタギを題材にしたリアルな漫画(犬はしゃべらない)を書きたいから投資してくれというクラウドファンディングがあったならばお金を払うな。銀、ウィードの外伝や続編ではなく、新作が読みたいから。その辺が、読者のジレンマだったりする。自分が見たいと思う気持ちの作家さんの生活。どっちも大事だからね。





さて、今回紹介するのは言わずと知れた大傑作。『スラムダンク』
ヤンキーだった主人公・桜木花道がひょんな事からバスケに入部して、バスケの才能を開花させるスポーツ漫画だ。


しかし、現実のスポーツの体育会系とはちょっと違う。爽やかなんだよね。全体的に。体育会系のノリなんだけど、でも爽やかで嫌な気持ちにならない。もちろん自分は体育会系だったけど、あのノリって絶対軍隊を超えてるよね。軍隊は職だけら我慢すれば金が貰えるけれど、部のあれは全てボランティアだ。スポーツも上手くならないし、得られるメリットがあまりない。この漫画は読んでいて気持ちがいい。実は面倒見の良い先輩・ゴリ(赤木剛憲)や、天才肌のライバル・流川楓。怒鳴ったり癇癪を決して起こさずに発破をかける温厚な安西先生。「バスケがしたいです。」の三井先輩。圧倒的な自身の持ち主・「天才ですから。」桜木花道。みんないいキャラしていて、良いんだよ。不快にならない。爽やかで気持ちがいい。


テンポの良さもいい、練習試合から神奈川予選、インターハイ。とポンポン話が進む。と言ってもジャンプでリアルタイムで読むと結構しんどいかも。あくまでもコミックだからこそすんなりと読める。今はコミックしかないから、問題は無い。熱んだよ。1試合1試合。全てが名勝負。個人的には相手チームにもドラマがあった豊玉高校戦が好き。前半。豊玉高校のラフプレイに頭にきていた面々が安西先生に叱責される場面もいい。現監督とチームの不和が限界点に達し、チームがバラバラになっていく様子もリアルだ。この試合に限らず、やっぱりどの試合も読んでいて飽きない。というよりも読んでいく内に終盤に向けてどんどん盛りがっていく。あの臨場感と名シーンの多さは神かかっている。神かかっているとしか思えないだよね。

ラスボスの山王工業戦も凄い。
正直、続編が読みたいけれど山王を超える相手はそれこそ留学生の上手い黒人が加入したチームになってしまう。自分の想像力ではあれ以上のチームは生み出せない。圧倒的な力で湘北を追い込み、粉砕しようとするあの強さ。力に対する圧倒的なエゴリズム。
相手に一切の油断をしないという精強さ。まさにエリートチーム。これに一体湘北がどうやって勝ち、上回るのか。ここは絶対読んでみて欲しい。


あの終わらせ方は凄い。下品な言い方をすれば『スラムダンク』はそれだけで一生食べていける作品だ。高校1年のインターハイ終了で31巻。そのペースで連載を進めながら、大学編。社会人編、NBA編、Bリーグ編等々……。作者のセンスが無くなって、読者に見切られない限り連載ができる。第2のドカベンなんて目がないはずだ。なのにたったの31巻。31巻でその物語に幕を閉じた。これは凄い決断だなって。並みの勇気ではできない選択だなって。まだまだ書く話はいっぱいあったろうに、唐突なその幕引き。衝撃だったね。



面白かった。圧倒的に面白かった。
悪名高き打ち切り連発の少年ジャンプであそこまで物語を作り、人を熱中させた。というのはやっぱりすごい。
この漫画を見て、地元熊本の「熊本ウォルターズ」の試合が見たくなった。今度見に行こう。

ちなみ、今現在。新装版も発売中。そちらもチェックだ。

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毎週金曜19時更新。 目に留まった創作物にレビューを書きます。批評家では無いので、凝った事は書きません。文章は硬いめだけど、方針はゆるゆるです。よろしくです。

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