サイコパスという言葉は一人歩きしている。
あまりにも一般的に使われ過ぎた結果、ちょっとした属性の様な扱いになってしまった。
話のネタとして時々使われるサイコパス診断って、
実際のの所元ネタは不明で少なくとも学術的見地がある訳でもない。
それらしい問題を作り上げている。結局はなぞなぞクイズみたいなものだ。
サイコパスというイメージは誰もが一致している。
冷酷、冷淡で残酷、非道とそんなニュアンスで誰ともそんなイメージだろう。
だが、フィクションの世界のサイコパスの印象が強すぎて、
現実世界におけるその実態や実情はあまりよくわかっていない。
さて今回紹介する『サイコパス』は数年前、20万本を超えたベストセラー新書だ。
脳科学者でもある著者が、
数多くの研究結果を元に発育環境や遺伝、
脳の欠陥という視点から人の中にいる「それ。」に迫っていく。
まずおさらいととしてサイコパスという人種の解説から始まる。
サイコパスというのは、
良心のブレーキの働きが弱く、著しいほど利己的な思考回路を持った人間である。
その結果「犯罪を犯す人間=サイコパス」という印象まで持たれてしまった様に思う。
損得の概念で物事を図る事が多く利己的ではある一方で、孤独感に苛まれる事が多い。
ここで知り合いの顔が思い浮かぶ事だろう。
「約100人に1人」という割合でサイコパスは存在する。
知り合いでサイコパスがいても全くおかしい話ではない。
なら、サイコパス何故起こりえるのか。
この本で主に脳の一部、
※1扁桃体、※2眼窩前頭皮質、内側前頭前皮質の働きを弱さにあるという。
※1 快適、不快、恐怖と言った感情を決める。
※2 2つ共「悔しい。」「腹が立った。」「楽しい。」と言った感情を呼び起こす器官。
また働きが弱さにも個人差があり、
それが勝ち組サイコパス(社会的地位の高いサイコパス)と、
負け組サイコパス(社会的地位の低いサイコパス)という違いを生んでいる。
脳の機能については遺伝性が高い。
また、その発育環境によって反社会性が高まる。
または引き金となる事もあるという。
ここまで読んで、
サイコパスという存在も元をただせば発達障害の一種なのかなって思えてきた。
今、何かと話題なADHD(注意欠如・多動症)も脳の機能不全によるもので、
こちらも原因は遺伝と言う。
「サイコパス」という存在を必要以上に邪悪で、
おぞましい存在というイメージばかりが増長していった結果。
怪物の様な人種が生まれてしまった。その様に思う。
それ以上に明確な診断が難しくて、レッテル張りの言葉になっている節もある。
ただでさえADHD診断ですら診断が出来る医師が少なく誤診も多い現状、
診断する事すら難しいというのに、
セルフチェックでサイコパスがわかるのか。というのは大きな疑問だ。
意外と善人と呼ばれる人がサイコパスで、
シリアルキラーが厳密にはサイコパスでは無い。という事も考えられる。
サイコパスに対する基礎知識が得られた反面、より謎めいた、
よりわからない存在になってしまった。
フィクションの世界においてはその活躍は計り知れない存在。サイコパス。
人間社会にいる心の痛みを理解できない存在。
ただ、そのイメージばかりが先行し、
サイコパスというだけで悪と言われかねない段階まで来てしまった。
確かに良心を疑う低俗で粗暴な人間はいる。
自分を美化する反面、他人に対して過大な要求を課す人間もいる。
それらの人間に病名がついたのかもしれない。
やっとそこまで人間に対するアプローチが進んだのかもしれない。
しかし、まだまだ人間に対して大きな謎も多い。
未だ研究段階の時期に、素人が憶測で物を言うという事は危険だと感じた。
より人間に対する研究が進む事を願う。
公式サイト
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166610945
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