シン・ウルトラマン ─どこまでもマニアックに、どこまでもコアに、そしてみんなでシェアする。─

2022年6月24日金曜日

映画 日本映画 樋口真嗣

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独断と偏見とちょっとしたスパイス  20



シン・ウルトラマン

─どこまでもマニアックに、どこまでもコアに、そしてみんなでシェアする。─





東宝オフィシャルサイトより引用

https://www.toho.co.jp/movie/lineup/shin-ultraman.html










小さい頃は『トムとジェリー』や『こち亀』みたいな

ギャグアニメばかり見ていた。


特撮はあまり見なかった。

『がんばれ!!ロボコン』を少し、

後は小学4年生の頃流行った『特捜戦隊デカレンジャー』をたまに見るぐらい。

仮面ライダーやウルトラマンはほとんど見みかった。


当時の家が山の麓で電波が悪くて、

チャンネルがまともに映らなかった事もあるのだと思うだけど、

小さい時の仮面ライダーってなんか怖かっただよね。

当時暗く見えた作風やバトルシーンが苦手で、見た記憶がほとんどない。


ウルトラマンは何時にやっていたのか知らない。

それだけ私には遠く縁も無かった作品だと思う。



そんな私が今回『シン・ウルトラマン』を見に行くって、ちょっと皮肉。

大人になって特撮デビュー。

ってまるで子供時代を取り戻しに行っている感じがして、変な気分。


ただ『シン・ゴジラ』が面白かったから、

前情報は極力遮断し今回『シン・ウルトラマン』を見に行く事にした。






『シン・ウルトラマン』はとにかくコアで、情報量の多い映画だった。

見終わった時に、その作品の情報量の多さにパンクしてしまい。

話を頭の中で整理するだけでいっぱいいっぱいだった。


早川文庫でありそうなハードSF小説の分厚い作品を読み終わったかのような、

そんな感覚。


面白かっただけど、自分の見た映画が面白かったのか、つまんなかったのか。

映画館を出た時直よくわからなかった。

コアな作品を見ると、自分の感想は正しいのかどうか考え始めてしまって、

自分の評価が分からなくなってしまう。今だと言える、面白い映画だった。



すこし時間を空け冷静になると、また何度も見たくなる。

一回みただけでは、作内にちりばめられた情報を咀嚼するだけで精一杯で、

新しい発見をする為に、もう一回、またもう一回と見たくなるような、

そんなリピート欲を駆り立てる。

恐ろしい映画に仕上がっている。


ブルーレイが発売されたら、途中途中で一時停止を押しながらゆっくり見たい。

絶対に新しい発見が見つかるはず。


遠い未来の先に、地上波で放送された時に

『シン・ウルトラマン』でSNSがパンクする未来が見える。

人気のインフルエンサーが気の利いたツイートで

『シン・ウルトラマン』を解説し、

ファンアートが描かれ、またそれが秒で拡散し、

数百、数万のいいねリツイートが飛び交い、みんなでシェアする。


パロディは過去作のBGMを多く用いたシーンも多く、

知らない人に教えるというオタクの心をくすぐるいい演出だと思う。

パロディネタは私はほとんど知らないので、

疎外感は凄かったけど、地上波だったらそう言った問題も無い。


昔のニコニコ動画みたいな一体感があり、

『ラピタ』や『コマンドー』みたいに人を引き付ける。

そんな多くの人達とシェアされる映画になると、私は思った。


今ですらツイッターでは面白いツイートが沢山流れているだから。




『シン・ゴジラ』はどことなく視聴層を

日本人向けにターゲットを狭く映画を作っていた様に感じたが、

『シン・ウルトラマン』はさらに

視聴層のターゲットを狭めて作られた映画に思えた。


コアでマニアックで、どことなくオタクっぽい感じ。

刺さる人には刺さるけど、合わない人間にはとんとダメみたいな。

そんな尖がり方をしている。

少なくとも一般受けはしないし、容易におすすめできない。


そして、感じる作家性。

商業作品でもまだまだ作家性って健在なんだなって再確認。

ぶっちゃけ商業作品に作家性って大作映画では無理だと思っていただけに、

ここまで自分たちがやりたい事を詰め込んだ映画が作れる事に、

ちょっと希望を感じた。


とはいえ長澤まさみの一部シーンがツイッターで軽く炎上していたが、

そのシーンは見ていてしんどいのはある。

二次元だったらわりと人間もデフォルメされるし、

フィクションだとわかりきっているから見れるけど、

実写やと妙な生々しさや変態さが出てきて、

ばつの悪さを感じた。



ウルトラマンの造形だけはどうしても苦手だった。

ウルトラマンってかっこいい物というイメージがあっただけに、

『シン・ウルトラマン』のウルトラマンは不気味でただただ怖い。

他のウルトラマンは苦手意識が無いのだけに

『シン・ウルトラマン』のウルトラマンには、

一種の恐怖感と不気味さ、無機質さがあり、

ホラーの怪物を見ているかのような気分になってしまう。


個人的にぶっちゃけDBD(ホラーゲーム)のキラーよりも

怖い造形をしていると思った。


怪獣はスタイリッシュでエヴァの使徒みたい。

ここは各人の好みって感じ。今時の怪獣って感じかな。無機物よりの怪獣でさ。




話は凄くテンポが良い。

でも『シン・ゴジラ』みたいに役者が凄く早口では無いし、

でも無駄にグダグダなシーンも無く本当にサクサク。


映画公開前の15分程の映画の広告CMやら映画泥棒の注意喚起のCMすら、

煩わしく思えて、もう映画が始まる前から帰りたいと思ってしまったけど、

映画が始まると夢中で見てしまった。


話をざっくりまとめると、

禍威獣(怪獣)対策の為の政府機関・禍特対(かとくたい)の一員だった神永が、

ひょんな事からウルトラマンと融合してしまう。


異星人の陰謀や日本政府の動向。

ウルトラマンの故郷・光の星からの最後通牒と度重なる困難の中で、

人を知ろうとするウルトラマンと、風変りな男神永、

そして禍特対の面々はどのような選択をするのか。


というお話。



プロフェッショナルな組織内の会話にはあまり無駄が無く、

作中の緊張感が最初から最後まで続くから、画面から離れられない。

トイレなんて行く暇がない。



「あ、今つまらないな。」とか

「話が進まないのに、まだこのやり取りをするの。」とか、

そういうイライラは無かった。これが快適さになったと思う。



圧倒的な絶望からわずかな希望を手繰り寄せる、

終盤のからラストシーンは本当に好き。




やっぱり見て欲しいのは山本耕史演じるメフィラス星人。


メフィラス構文を生み出した彼だ。

人類を優に超える技術力と策略、

そしてウルトラマンと互角に戦える程の圧倒的なパワー。


そして、「私の好きな言葉です。」という独特な言い回し。


ネットミールとなるキャラはやはりインパクトが違う。

これはぜひ一度見て欲しい。





コアだった。マニアックだった。

そしてこのインパクト。癖の凄さよ。


合わない人は多分アンチになる。好きな人永遠と語りだす。

友達とわいわい見る映画では無く、

一人で見に行ってインターネットでシェアする。


深くは進めないが気が向いたら、見たらいいと思う。


ちなみに私は基本映画館に通って何回も同じ映画を見たくないと思っているが、

『シン・ウルトラマン』はまたもう一回見に行きたいと思った。




公式サイト

https://shin-ultraman.jp/

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