アンフィニシュトの書 悲劇の物語に幸せの結末を  浅白深也 目下コウ ─すべては結末を変える為に─

2023年1月9日月曜日

KADOKAWA 浅白深也 電撃文庫 読書 日下コウ

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 独断と偏見とちょっとしたスパイス 44

アンフィニシュトの書 悲劇の物語に幸せの結末を  浅白深也  目下コウ
─すべては結末を変える為に─

公式サイトより引用




撃文庫、久々に読んだ。
ラノベと言ったら電撃文庫のイメージが強い。
アニメ化を果たした作品は数知れず、凄い勢いと力を持ったレーベルだと思う。

ラノベどころか読書自体から離れていた2022年。

読んでいた本も最近は歴史系書籍が多かったから、
たまにはこうやってラノベも読みたくなる。ラノベの持つキャラクター性や、
読む人の願望に寄り添った大衆的な感じが好き。

やっぱり大衆作品は、大衆の写し鏡であってほしいと思うだよね。
見たい人の願望に近づいた、まさしく鏡みたいな。

そんな作品こそ大衆作品だと思う。
もちろん行き過ぎると媚びた感じもするし、作家性が無くなってしまう。
そしてあくまでも商品であって,遠い未来まで残る芸術作品にはなれない。

でも、そんなジャンキーさがいいんでしょ。




今回とりあげる作品はこちら。
『アンフィニシュトの書 悲劇の物語に幸せの結末を』

平たく言えば、物語の世界でハッピーエンドを目指す。
青春×ループアドベンチャー



「主人公募集」

ある日町で見かけたこの奇妙なアルバイト募集のポスターが頭らから離れなかった
高校生・小樟輝馬(ここのぎてるま)はこのバイトを応募する。

バイト先は町から離れた山奥の洋館。
そこで住む館の主で変人霧ヶ峰絵色(きりがみねえしき)が、輝馬に頼んだ事。
それは読者を物語の登場人物にする本・アンフィニシュトの書を読み、
物語の登場人物の1人としてハッピーエンドを目指せ。という物。

「アンフィニシュトの書」はどちらかと言うと絵本に近い代物になる。
途中までは描かれているが残りは白紙。
読むと読み手はたちまち寝てしまい、物語の世界へと誘われる。
制限も多く、物語の設定にあった読者が読まないと物語は始まらない。
故に本の最後のエンディングを見る為に、「主人公」輝馬は呼ばれた。
という分けだ。


輝馬は物語世界のヒロイン・パン職人のアリアに出会う。
彼女との会話やパン職人としての仕事を経験し、自身の考えを改めた。
しかし、彼女は物語の最後には必ず殺されてしまうのだった。

アリアの救う為。小樟少年は何度も本を読みループする。
ハッピーエンドを迎える為に。



さてさて、今作は最初にも書いた通りループ物。
ただし物語の世界をループする事もあって、SF感は薄目。
青春の爽やかさと苦み。それにミステリー要素が足されている感じ。

ぶっちゃけ加筆を加えたら一般文芸化できそうな気もする。
東京創元社の文庫辺りで発売されていそう。

ループを通して事件の真相を探る過程で精神的に苦しみつつも、
人間として大きな成長を迎える輝馬くんの姿を、是非応援して欲しい。
根暗で卑屈だった彼が目標に真っすぐと立ち向かう姿は王道だった。

ビターな結末を通して、糧を得た彼の頑張りは読んでいて好きだったよ。

青春らしい事はしていないけれど、この青春っぽさっていいよね。


ヒロインは2人。
物語世界におけるアリアと現実世界での雇い主の霧ヶ峰絵色。
……なんだけど個人的にはクラスメイトの伊勢山隼人君(男)も推したい。

輝馬的には喋るクラスメイトで顔見知り以上友達未満の間柄。
でも振る舞い方はもう完全に幼馴染系ヒロインの立ち回り。

登場頻度こそ少ないが、結構肝心な所で登場しては輝馬の背中を押してくれるキーマン。
そして物語のラストカットでのセリフがもうヒロインのそれなんよね。
イラストも無いサブキャラなのに、なまじヒロイン力高すぎて本当に好き。
もしもシリーズ化したら、メインキャラ昇格して欲しい。



「アンフィニシュトの書」はわりとゲーム的な要素が強くて、
小説や物語の世界というよりもTRPGのシティシナリオ感は否めない。

物語の世界を越える範囲には行く事も出来ないし、
登場人物達と出会う事を避けてしまうと、そもそも物語が始まらない。

そこが難点の様に感じた。

物語の結末を変える。というよりもゲームをクリアする。
という感じにしか見えないよね。

それが完全に悪いとは言わないけれど、
「物語の結末を変える。」って妄想は、創作を楽しむ人なら一度は考えると思う。
でもその物語はあくまでも濃くない、そこまで燃えないかな。

いや、輝馬くんの頑張りは見ていて気持ちいいだけど、
そこはちょっと違うかなって思ってしまった。




白かった。
描写不足を感じる部分はあるが、素直に応援したくなるキャラはやはり良い。
出来たらシリーズ化して欲しいけれど、どうだろう。

もし読む機会がある人ならぜひ手に取って読んでもいいと思う。


ちょっとラノベを読むには歳を食って来たなって思う最近。
読んでいて素直に楽しい、面白いって思える感性が、
まだ自分に残っている事に対して、ただただ幸せに思う。

この感性が残っているうちに多くの作品に出合って、
出来る限り文章という形で紹介できたらなって思います。


公式サイト




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毎週金曜19時更新。 目に留まった創作物にレビューを書きます。批評家では無いので、凝った事は書きません。文章は硬いめだけど、方針はゆるゆるです。よろしくです。

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