RRR ─大英帝国死すべし 修羅と化した男たちの宿命と友情─

2023年2月10日金曜日

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 独断と偏見とちょっとしたスパイス 47

RRR 
─大英帝国死すべし 修羅と化した男たちの宿命と友情─




公式サイトより引用






私の出勤時間は一般的な企業よりは遅い9時代。だから朝は少しゆとりがある。

朝。何気なくTVを付けていると、
朝の情報番組『スッキリ』でインド映画の特集されている。

『スッキリ』でインド映画が特集されている……。


私は目を疑った。
インド映画の特集に日本の朝のTV番組で放送されるなんて。

一体何が起こっているんだ。



インド映画の画作りはちょっと違う。
あの莫大な人口を背景にした想像を超える人数のエキストラ。
まるでミュージカルを連想させるようなキレッキレのダンスシーン。

今時予算の兼ね合いでよその国では中々できないようなハイスケールな作品が多い印象だ。


しかし日本においてはインド映画はあくまでもマイナーの域を出ない。



それが日本人に熱狂的な支持を集める事になるとは、想像にもできない事。
応援上映⁉ カルチャーショックが止まらない。

早速熊本で公開されている劇場を調べる。

熊本には「電気館」というミニシアターがあるが、
『RRR』は比較的大きなシネコンでやってる。
これは人気作だ。


さっそく私は見に行く事にした。





上映時間は約3時間。

本国インドではインターバル(休憩)が途中で挟む程に長い。

想像以上に凄い映画だった。
最初から最後まで疾風怒濤のアクション劇。

記憶に残るような強烈なシーンばかりで、そもそも序盤から飛ばしている。
アクションにダンスにミュージカル。凄い。凄い。ただただ凄い濃厚な映画体感ができる。


ただ一方で内容は良くも悪くも20世紀の映画の様に思う。

どこか懐かしくて面白い映画体験が出来たが、
その一方で違和感みたいなものもあった。




この映画の魅力。
それはこの強烈なアクションと宿命や使命を持った男たちの友情。

これに尽きる。


私が子供の頃にTVでやっていた映画番組。
大体こういう映画番組でやっている映画って古いアクション映画が多かった。
筋肉隆々の男たちが悪党を蹴散らしてヒロインといい感じになって終わる。
今では「古臭い」分類に入る。そんな20世紀のアクション映画たち。

それが装いを変えて令和に最新の映画として蘇るとは思ってもいなかった。

物語はシンプルな勧善懲悪ストーリー。


舞台は1920年。イギリスの植民地時代だったインド。
インド総督一行は森深いある村を訪れていた。

そこで気に入った少女をはした金を払うと誘拐同然で連れ去った。

イギリス人から少女を取り返すべく村は戦士・ビームらを街へ派遣する。


一方その頃イギリス人の元で警察官をしていたラーマがいた。
彼もまた戦士であり、暴徒にたった一人で挑み任務を遂行する豪傑だった。

彼にもまた目的があり、その為に出世を果たすべくイギリス人に仕えていた。


ビームとラーマ。一見敵対関係である2人は出会い、そして友情を育む。
宿命と使命。友情と任務の狭間で。


話はシンプルなんけど、
ビームとラーマの関係性がとてもスリリングなんだよね。

ビームたちの活動はイギリス人らにばれてしまい、指名手配されている。
そしてラーマはビームたちを逮捕する事で出世の足掛かりにしたい。

しかし、彼らは知らないうちに出合い、兄弟のような関係性になってしまった。
両者の関係がどこでバレるのだろうと、その辺ドキドキしながら見ていた。


やっぱり男たちの友情は見ていて尊い。
友情という言葉が簡単に崩れる時代だからこそ、熱い友情を見ていて清々しい。

大人になるにつれて友情が希薄になる。友達も自然に減ってしまう。
大人になって思った。友達を1人作る事がどんなに難しいか。

だから赤の他人だった2人が友情を育み、共に戦う姿はただただ熱かった。

意外と男たちの友情をメインにした作品って最近中々見れてなかったから、
心にグッとくるものがあったね。


アクションシーンの迫力。これもまた凄い。

SNSで踊ってみた動画が作られるぐらいキレキレダンスシーン。

ぶっ飛んでてリアリティは無いけれど、
漫画やアニメの様なアクションを実写でありながら違和感を少なくしている。

最初からクライマックスな怒涛のアクション。

序盤からもう物語が終わるのかって言うぐらい。
それぐらいのインパクトの衝撃があって、もうたぶん一生内容を忘れる事は無いと思う。


話題のダンスシーンや肩車で敵と戦うシーンも好きだけど、
やっぱり序盤の子供を助けるシーンが一番好き。

ビームとラーマが初めて出会ったシーンで、
会話もした事が無かった2人がぴったりとあった息で子供を助ける。

正直震えたね。

この映画の方向性が強く印象付けたシーンに思えた。


上映時間3時間とあって見終わった時には結構疲れたが、
まるで何かを成し遂げた後の様な充足感はある。

この映画に「退屈」という言葉は無い。



一方この映画はプロパガンダ的側面が強く、ここが悪い意味で20世紀の映画だと思った。

そもそもビームとラーマはモチーフになった人物がいる。
ラーマことアッルーリ・シータラーマ・ラージュと、
ビームことコムラム・ビームだ。

現地においては像が作られ日本語版Wikipediaもある。

彼らは時期は違えどイギリスや現地政府に対し反乱を起こし敗れた。

物語自体はフィクション。
しかし、イギリスへの抵抗の象徴として2人を起用したと言えるだろう。

それに合わせて物語には古代インドの神話をモチーフにしている。
という点も見逃せない。

インドのナショナリズム。というものを強く意識させられた。

それがこの映画から感じる違和感に繋がったと思う。

ツイッター上のあるツイートで、
私達はインド人やイギリス人では無いからこそこの映画を純粋に楽しめる。
というニュアンスのものがあった。

その通りだと思う。


その映画の背景にあるインド国内の歴史問題。
そしてナショナリズム。


映画人というものはどこか思想的な一面を持っている。
だからその面に関しては私は何も思わないようにしている。

自由の国だからね。

ただ娯楽映画ながらアメリカ映画よりもストレートな描き方は、ちょっと怖いと思った。

本邦はこれで痛い目にあっているだけにね。





いい映画だと思う。
エネルギッシュで、映画から力をもらいたい人にはピッタリの映画に思えた。
男たちの熱い友情、戦い、ダンスと悪いシーンは無いと言ってもいい。
3時間と言うとても長い映画だったものの、パワーに満ちた素晴らしい映画だった。

しかし一方でばつの悪さも覚えた。

アメリカのプロパガンダ映画よりもストレートな表明は、
ある種の恐怖感を覚えたのも事実だ。


私達はこの件に関しては当事者では無い。
無邪気にこの映画が見れる事を感謝したいと思う。


良かったら見に行ってみて欲しい。

誰もが疲れている時代。
その疲れを吹き飛ばす痛快アクションは、まさに心の栄養だ。


公式サイト

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