シン・仮面ライダー  ー想いは受け継がれ、意志は残るー

2023年4月7日金曜日

シネバザール 庵野秀明 映画 東映 日本映画

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独断と偏見とちょっとしたスパイス 50

シン・仮面ライダー
想いは受け継がれ、意志は残る



公式サイトより転載





さい頃からあまり特撮を見なかったのだけど、
その中でも特に仮面ライダーについては苦手意識が強かった。

テレビでやっていた仮面ライダーは画が暗くて、
まるでホラーの様に感じてしまい、怖い物だって当時の私は思っていた。
だから仮面ライダーって全然わからないし、作品に特に思い出も無い。

社会出て思うのだけど、仮面ライダーは大人でも見ている人が多い。
それこそオタク層から全然オタクじゃない人まで、様々な人が。
普通に子供のいない人でも、ライダーの変身ベルトを買うために争奪戦に参加している。

あの熱量を知ってしまうと、自分はとてももったいない事をしたって落ち込む。
変身ベルトが一番似合う子供の時にそれを付けられなかった事に。

子供の時でしかできない体験をスルーしてしまって事に気が付いた時って、
私は地味に凹むのよね。人生は今が一番楽しいのだけど、
体験していたら人生がさらに楽しくなっただろうなって思ってしまうから。

まあ、これも一種の無いものねだりなんだろうけどね。






という事で「シン・仮面ライダー」が、
私が初めて最初から最後まで通して見た仮面ライダーです。

見た理由は「シン・シリーズ」だったから。

「シン・シリーズ」って元の作品へのオマージュや小ネタを挟む事が多くって、
その辺のネタがさっぱりわからないから、モヤっとする瞬間はあるけれど。

でもその分話題性の高い映画がよく作られるからね。
見ておきたいと思った。


この映画は『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』とは違い、
最も庵野監督の作家性が現れた映画だったと思う。
過去の『シンゴジラ』『シンウルトラマン』(監督は違うけど)とは違い、
広く観客にウケる様に作っていない。

ネットを見ると賛否両論の評価だけど、それがよくわかる。



だけど私は好き。

こういう言い方をすると大変失礼ではあるが、
海外のゲームファンとかがよくファンメイドの動画を作成する事がある。
早い話が海外の二次創作だ。それを見た時の様な気持ちになった。

「二次創作」という単語はレビューにおいて作品を批判する時に使われる事が多い。

だから不適切な言い回しではある。しかし、それは重々承知している。

だけど正直、私はそう思った。


どうしても実写だから感じる違和感はある。
セリフの言い回しの一つ一つが実写映画だからこその違和感が、
どうしても感じずにはいられない。


しかし、熱意や狂気。
どうしても『仮面ライダー』というコンテンツを使って、
自分の想像した作品を生み出したいとする。

クリエイターのエゴを感じられたから。


そして、予想外に動き出す物語が魅せる怒涛の展開。

過去のシンシリーズと比べて、個別の登場人物達に焦点を合わせた人間模様。


特に終盤の展開が刺さる人間だったから、この映画は嫌いにはなれない。


映画のポスターに使われていたヒロインのセリフ。
「あなたを信じてあなたに託す。」
という言葉がここまで映画を象徴するセリフになっているとは思わなかった。


人に物事を託し、受け継がれていく。

こういう展開。私は好きなんだよね。





良い映画の条件の一つ。

それはテンポの良さだと思う。

テンポが遅い映画って退屈するし、物語に対する没入感が下がる。


この映画のテンポの良さを例えるならば「フルスロットル」でも不適切。
スロットルを捻るまでは遅いからね。


もはや自由落下なんよ。

映画冒頭からエンドロールまで。気が付くと映画は終わっていた。
とんでもない物を見せられていた事を知った。



実は映画館で映画を見る事がとても苦手だ。

周りの人の迷惑になっていないかとか、
椅子の座り心地が気になったりしてどうしても集中できない事がある。

この映画は濃い。内容がとても濃いから他の事を考える暇がない。

最近の話題の新書『映画を早送りで観る人たち』という本で、
早送りで作品を見られる事は苦々しく思った脚本家の中には内容を詰め込み、
とにかく内容を濃くする事で作品を早送りさせられる事を防ぐ方法を考えた人もいる。

この映画って話の方向性自体は早くから提示されるけど、
展開が読めないから、先が想像できない。

だからそういう退屈さや、映画を見るある種の辛さとは無縁に感じた。



ただこの圧倒的なSF描写。専門用語の羅列も永遠と続く。
多少は作内でフォローもされるが、最後ら辺は理解が追い付かない。

まあSF作品って理解する事よりも、ノリで楽しんだ者の勝ちみたいな所もある一方で、
SF苦手な人にはただただ苦痛だとは思う。


設定が気になった人はウィキペディアで補完する事を勧める。
ただし結末まで内容が書いてあるので、映画を見る予定がある人は見るの禁止。





面ライダーの持つ昭和レトロさと現代のポップカルチャー
そして監督のエゴリズムをミキサーにかけたような趣味の映画。
ポップで、クラシカルで。そしてケレン味あふれる演出は、
チープとも斬新とも取れるだろう。要は紙一重だ。


映画の途中で、途中で石川賢原作の実写映画『極道兵器』を連想した。
石川賢は有名どころだとゲッターロボを描いた漫画家で、
あちらも腕にガトリング砲を改造手術を受けた戦闘狂の主人公がひょんな事から、
世界征服をたくらむ秘密結社と戦うストーリー。

もちろん製作費は圧倒的に『シン・仮面ライダー』の方がかかっている。


話のあらすじが似ている事もあるけど、
日本刀で一騎打ちとか、CG、流血描写、ゴア表現。

その辺のギミックが連想させたのだと思う。



映画冒頭の血生臭い戦闘シーンから、観客の選別が始まる。

過剰な流血描写は画を軽くしてしまう事があるが、
さっきも書いた通りこの映画は万人向けに作られていない。
規制もテレビよりは緩いだろう。

とは言え冒頭はチープなホラー映画みたいな印象を感じてしまう。

戸惑いはあった。


私は観客の3割から4割の人にウケればいいだろうって、
作り手は思っているのでは無いかと疑っている。

20年後。30年後。
一部の熱狂的なファンにより、
カルト的な人気を持った映画として落ち着くと思う。


でも私はこの映画を最後まで見た時。
この映画を好きになった。それで十分だった。


連れと見に行く映画じゃない。

私自身も強くはお勧めしないし、これが『仮面ライダー』の全てとも思わない。


ただ、もしも私と感性が近いと感じたならば。
見てみても面白いと思う。


公式サイト




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毎週金曜19時更新。 目に留まった創作物にレビューを書きます。批評家では無いので、凝った事は書きません。文章は硬いめだけど、方針はゆるゆるです。よろしくです。

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