探偵マーロウ ─私立探偵 ロサンゼルスを奔る─

2023年7月7日金曜日

オープン・ロード・フィルムズ ニール・ジョーダン メトロポリタン・フィルムエクスポート 映画 海外映画

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独断と偏見とちょっとしたスパイス 55

探偵マーロウ ─私立探偵 ロサンゼルスを奔る─



公式サイトより引用



ハードボイルドにも種類がある。

  • 自身の体験や思想を反映させた結果、ハードボイルドになってしまった。
作家さんの経歴が個性的な場合に多い。
 独善的ではあるが、圧倒的な個性やリアリティがあって味がある。
作品それぞれに好き嫌いはあるだろうが、それが一種の作風、個性として評価される。

  • 作家のあこがれや理想を反映させた結果、それがハードボイルドになった。
「大人のかっこよさ」という理想像の一種だと思うだよね。ハードボイルドって。
サブカル的にはこれも一種の「あざとい」に入ると思う。
愛されるキャラクターの属性の一つで、キャラの魅力を引き立てる。


どちらも魅力的で、物語に苦みや渋みを与えるハードボイルド。

大人になりきれない私は、
ハードボイルドに対する憧れは消えない。




今回取り上げる作品は海外映画『探偵マーロウ』

理想の私立探偵像がこの映画にあった。

原作はレイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウシリーズの続編を、
現代の作家・ジョン・バンヴィルが執筆したという『黒い瞳のブロンド』

原作シリーズは未読。

物語の舞台は戦前のロサンゼルス。
ロサンゼルスに事務所を構えるマーロウの元にブロンドの女が依頼する。
内容は行方不明となった依頼主の愛人だった男を捜索する事。
男を探すにつれて判明する映画業界と富裕層向け高級クラブの闇。
様々な利害関係が浮き彫りになる中で、正義を貫こうとするマーロンの運命とは。

そんな私立探偵物のサスペンス映画です。




今日も今日とてDenkikan。
熊本が誇るミニシアターで見る。

見に行くい理由はただ一つ。映画のポスターが前時代的でかっこよく見えたから。
レトロカルチャーがここ数年のトレンドになっている中で、
このクラシカルな雰囲気のポスターには痺れた。

わりとポリコレと映画の問題が広く言われている情勢で、
ここまで古典的な映画が生まれた事にも一種の意外性があった。




この映画を一言で表すならば時代劇

そうアメリカの時代劇だ。


内容も時代も、何もかもが違うのだけど『鬼平犯科帳』を連想した。

私は日本人で日本文化圏にいるから、目に映るものが新鮮に見えた。
潜入や戦闘時も決して変えなかったスーツにハットを被ったマーロウのスタイル。
映画で描かれた物質的にも豊かな戦前アメリカ社会の繁栄。

ハードボイルドな探偵に、上流階級の娘の依頼人。

特にマーロウら男たちのスーツスタイルには、ある種の憧れを覚えた。
『2nd』という30代ぐらいをメインターゲットにしたメンズファッション誌があるけど、
その中で紹介されそうなぐらい古典的ながらも完成されたスタイルは、
似合うかどうかは別にして一度やってみたいと思った。


しかし、しかしこの映画のクラシカルな世界観は、もはや古臭く感じた。
例えば時代劇は面白いだけど様々な「お約束」が多すぎてジャンルに目新しさを感じない。
逆を言えばこのマンネリが好かれている側面は否定出来ないけれど、
初見や若い人には基本的に進めにくイメージがついてしまっている。


それと同じ事がこの映画でも起きている。


映画全体のクラシカルな雰囲気は素晴らしい。
このどこまでも洗練されたダンディズム。ハードボイルドさは見ていて心地がいい。

しかし、まるで白黒映画を着色して現代に蘇らせたかの様な。
そんな古臭さも覚えた。ある種の懐古主義な感じ。

常に真新しさを求める人間には向かない映画になっていると思う。



内容は淡々と事件を調べていくマーロウの紳士的で、
時には機転を働かせたセリフの数々がまたかっこいい。

ただ探偵物の宿命か、展開自体は淡々としていて劇的なドラマとは無縁だった。

ネットのレビューを読んでいたりすると、それを退屈に捉えた人もいた。


でも私はそれが好きだった。
情報が殆どない所から始まって、
そこから地道に情報を手に入れて情報を授受繋ぎに整理する。

謎を推測するミステリー的な楽しみ方よりも、
謎を明らかにする過程を楽しむサスペンス的な楽しみがあったように思う。

結末までも含めて、私は楽しめた。





残念な事にこの映画はあまり評価されていない。

グーグルで映画の題名を検索すると上の方に、
「○○%のユーザーはこの映画を高く評価しました。」という表記が出るが、
2023年7月4日現在55%という、中々に低い数字を記載している。







この数字は正直中々見ないものだ。

それほどこの映画は世間一般的に評価されていない。

とは言え私はこの映画に大きな不満はない。確かに古臭い映画にはなっている。
なっているのだけど展開に大きな違和感を感じたりはしなかったから。


良くも悪くも時代劇的な映画には思う。
私はそれを新鮮なレトロ映画に感じたけれど、
人によってはこの映画を古臭い懐古主義映画と捉えるだろう。


そんな映画を私は敢えてお勧めしたい。
戦前アメリカの豊かな社会。
ダンディズムあふれる探偵マーロウの紳士的でハードボイルドなふるまい。

そして、ロサンゼルスの大きな闇。複雑な利害関係の中で、マーロウが見つけた真実とは。


ただただ純粋に「かっこいい」と思える、
この世界観を是非堪能していただければと思います。


公式サイト



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毎週金曜19時更新。 目に留まった創作物にレビューを書きます。批評家では無いので、凝った事は書きません。文章は硬いめだけど、方針はゆるゆるです。よろしくです。

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