プロパガンダ戦争 分断される世界とメディア (集英社新書) 内藤 正典 ─分断が世界を覆う中で。─

2022年7月23日土曜日

集英社 集英社新書 読書 内藤正典

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独断と偏見とちょっとしたスパイス 

第24回は、分断が世界を覆う中で。


プロパガンダ戦争 分断される世界とメディア (集英社新書) 内藤 正典 


公式サイトより転載
https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/1037-b/



 世界は今、様々な分断が図られている。

対立、反感、怒りと言った感情がSNSで可視化された現代。

様々な事柄に対して意見を表明する事ができる今、分断はより深刻となった。

「怒り」は共感を生み、沢山のいいねは自己肯定感を強め、

さらに過激な「怒り」を発露させる。完成されたループがそこにはある。


平和的問題解決の為の道筋は消え、怒りに対する反発は日に日に強くなっている。

そこには怒りや反発を煽るだけの愉快犯。

ただ一言言いたいだけの野次馬も集まり、

今日のSNSは混沌としている。


SNSという中毒性あふれる媒体の不健康さはどこから現れたのだろうか。





今回取り上げる書籍「プロパガンダ戦争」は、

世界を覆う分断と、それを増長させるメディア報道を通して、

  • 我々市民は一体メディアとどの様に向き合うのか。
  • メディアを通して、一体誰が誰の為に報道しているのかを考える。
  • メディア側の考えを意識する。
  • 海外の問題に対して、様々な国のメディアを通して複合的に問題を知る。

という視点を養う。


そして、その情報を通して物事や現在起こっている問題に対して

どのような視点からアプローチするのか。


現代の中東やトルコと欧米の政治問題という実例を通して、

西側諸国のメディア報道と現実との乖離、

または、アルジャジーラと欧州メディアとの違いについて

まとめられたものになる。


よってタイトルの『プロパガンダ戦争』の様な、

国家間の特務機関によって行われている。あるいは行われていた。

プロパガンダについてのまとめられた本では無いので注意されたし。



欧州とイスラム国家とのせめぎ合い。

シリア難民に対する処遇や、トルコに対する理不尽な報道。

欧州メディアから発信されるイスラム国家に対する批判が、

いかに恐怖や不安を煽る過激なものだったのかを、

非常に多くの実例を通してまとめられている。


非常に多くのページを費やされていて内容もショッキングだが、

あくまでも内容を補完する為のものでしかない。


この本を通して、その実例以上にメディアの力と限界について学ばされた。


メディアの力を軽視する論調は、日本のインターネットに広く語られているが、

情報の真偽にある程度の責任を持つ従来のメディアと、

未だ無法地帯が続くインターネットでは、未だ信憑性に差が大きい。

ネットソースとして、オールドメディアの記事が引用されているのを見るに、

その力は未だ健在と考えるのが妥当だろう。


しかし、新聞社やTV局はあくまでも民間企業に過ぎない。

その報道の在り方は時に扇動的であり、

またはメディアの受け取る市民や政治家。

企業へ忖度した内容になっている可能性は高い。


誰が誰の為にこのニュースを配信しているのか。

ニュースの裏側まで考え続ける必要がある。


また民間企業の為、日本で普通に生活をすると得られない情報もある。


日本で住んでいる限り、

例えばアフリカの某国で世界を揺るがす大事件が起こったとして、

現地の情報に詳しい専門的な記者が少なかったり、

または、ほぼいないかもしれない。


結果、日本においてより深い情報が日本語で手に入らず、

世界と日本の間に大きな情報の溝が生まれ、情報の格差が広がっていく。


また世界的にトップニュースだった事が日本では取り扱いが少ない。

という事も考えられる。


結局日本語という言語では、得られる情報には限りがあるという事だ。


それに対して、著者は一つの回答をする。以下引用する。

「これらの状況を生きていく上で、とりあえず私たちにできることは情報を集め、それを評価する力を身につけることです。メディアからもたらされる情報は、毒にも薬にもなります。それを見極めるリテラシーの習得と同時に、特に若い方たちに勧めたいのは、サバイバルのための言語習得です。もはや、学校の成績のためでも、入試のためでも、エリート・ビジネスマンになるためでもなく、生き残るための英語を学ぶ時代になったのです。できたら、英語だけではなく、もう一つ他の言語を学ぶと良いと思います。機械翻訳も長足の進歩を遂げていますから、基本的なことを知っていれば、翻訳機能を補助的に使うだけでも、ずいぶん世界が広がります。」

プロパガンダ戦争 分断される世界とメディア (集英社新書)P265より引用


シンプルながらも一番確実で優れた方法に違いはない。

世界の情報に飢えた我々は、この先世界に近からず遠からずに存在する為にも、

情報リテラシーと、情報を集める創意工夫をする必要性が高まっている。




この本はアルジャジーラを余りにも美化しすぎている様に思う。

欧州メディアには無い視点から報道するアルジャジーラも、

カタールの国営放送に過ぎない。

という点を踏まえ、一歩引いた視線で語るべきだと思う。


度々引用されるアルジャジーラの記事や、

圧力に屈しない姿勢は一定の評価はされるべきだが、

欧州メディアに対する批判的姿勢を示す以上、

アルジャジーラに対してもフラットな姿勢で精査して欲しい。


この辺については、批判的な読書を行ってもいいと思う。




普段から私はTwitterを使っているが、

Twitter上で度々行われる対立構造は、根深く、和解や解決とは程遠い。


ただ、一方で知る力の大きさ。「知識は力なり」という言葉が、

いかに現代社会を生きる上で重要か。痛感させられている。


私はその力を付け、この世がもっと住みやすくなるように学び続けたい。


公式サイト

https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/1037-b/


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