独断と偏見とちょっとしたスパイス
第25回は、─様々な想いが交錯する、どこまでも残酷で美しい夏の祭り─
第104回全国高等学校野球選手権大会
熊本予選 決勝
九州学院VS秀岳館
このブログにおいて始めて、
コンテンツ以外のリアルイベントを紹介する事になる。
元々作品を紹介するレビューサイトとして始めたこのサイト。
『独断と偏見とちょっとしたスパイス』だが、
行って良かったイベントとかも、
せっかくだからここに記載してみる事にする。
ブログ運営で視聴回数を増やすならば、
専門性を特化したブログが良いと聞くが、
まあまあ、深い事はこの際考えない事とする。
今回は7回裏からの高校野球決勝観戦。
カードは九州学院VS秀岳館。
強豪私立シード高の試合に行ってみて、
高校野球の観戦で思ったこと、感じた事。
そして、その魅力について、色々書いていきたい。
ちなみに私は行って良かったと思う。
来年は有給使ってでも最初から見たいぐらいだ。
高校野球の魅力が、あの時の球場にはあった。
青春の爽やかさと、残酷さ。日本のカルチャーに触れられる機会の一つだろう。
私は高校野球を藤崎台で見たのはもう10年位前の事になる。
母校の野球部の応援に他の運動部が駆り出された。
最初こそ先制して盛り上がるスタンド。
しかしその回でランナーだった主将の先輩が足か何かを痛めて、試合が止まった。
結構長い間中断された試合は再開されるや否や、怒涛の反撃を受ける。
記憶はうろ覚えだが、確か7回ぐらいでコールド負けで試合終了。
帰りは葬式みたいな、暗黒な雰囲気。
全然楽しくなかった。
ぼろ負け過ぎて悔しいとか、悲しいとか。
そういうものは無かった。
強制参加だったしね。
社会人になってから高校野球好きになり、見に行きたいと思うようになった。
周りには野球が好きな人が多くって、
色々と調べる内に何となく好きになっていたらから。
とはいえ何だかんだ言って行かなかったのが私だった。
しかし偶然が起こる。
仕事が休みの日に熊本県予選の決勝があるではありませんか。
雨天の影響によって予定よりもずれ込み、火曜日に行われることに。
今日こそは行く。と決まった所で、
藤崎台球場へと向かった。
諸事情も重なり、7回裏からの観戦となった。
放送大学の試験が終わってなかった……。
急いでいたので、熊本駅からタクシーで向かう。料金は1030円。
タクシーから見える光景もまた風情がある。
子ども文化会館から続く長く急な登り坂。
その坂を歩いて登る学生さんたち。
今まさに病院へ救急搬送しようとしている救急車。
かき氷の出店。
夏。夏がここにある。
球場に到着すると、その大きなトーナメント表が目についた。
今大会のトーナメント
自分たちの頃と比べて、チーム数は減っている。
母校は連合チームになり、一回戦敗退。 悲しい。
周りを見渡すと私みたいに、今から観戦チケットを買う人の他に、
ユニフォームを着た選手達が運営に参加していた。
パイプ椅子に座って交通整理?をする人。
チケット販売の店員に、チケット係まで。
運営まで高校生が駆り出されるのは、教育的には良さげだけど、
この暑い中だと中々の罰ゲーム……。
ご苦労様です。
入場料は500円。思っている以上に高い。
ついでに200円のパンフレットも買う。
そのパンフレット。
運営委員会のトップの方々からのメッセージ。
パンフレットには硬式、軟式の各学校のチームの名簿に写真。
秋の大会や春の大会等の直近の大会の結果等の記録。
コンクールで入選したポスターの挿絵が入っている。
良くも悪くも選手の保護者向けと言った所か。
表紙は好きなんだけど、買わなくても良かった商品。
せっかく文を生業としている朝日新聞が主催しているのだから、
読み物としてのクオリティを高めて欲しい
ちなみにチケットを買う前にコロナ対策の一環として、
住所や電話番号、名前の記入が求められる。
再入場は不可。
よって入場後にかき氷は買えない。
なんてことだ。
ロビーに入ると人でごった返している。
隅の売店には弁当の販売。
玄関入って左右の自販機には行列がある。
私もその列に並ぶが、人気の飲み物は大体完売。
事前に飲み物を買わなかった事に後悔しながら、
ミニボトルのカフェオレを買う。
バックネット裏席。
バックネット裏の席はあまり多くは無い。
座りやすい席は大体人が座っていて、空席はあるが行くのが大変だ。
上手く人の間をすり抜けて座るしかない。
客層は意外にも学生や若い人が多く、おじさんやおじいちゃんは少なめ。
平日という事もあるかもしれない。
ウグイス嬢のアナウンス。
秀岳館の迫力満点なブラスバンド応援。
一喜一憂する観客のぼやき声。
色々な感情が交錯した会場の雰囲気に飲まれ、
今シーズン始まって以来の夏を意識する。
青い空と青春。
この時点で着て良かったって思った。
暑い席から見えるこの光景が、絶景に見えたんだ。
度々飛んでくるファールボールに恐れながら、試合観戦は始まった。
とはいえ点差はこの時5-0で九州学院が優勢。
秀岳館は中々厳しい試合。
8回で九州学院はヒットから一塁に出塁したランナーを
観客も上手いとざわついた送りバンドで2塁へと動かし、
5番松下君の鋭い当たりからのツーベースヒットでランナーは生還。
ダメ押しの1点をつかみ取った。
盛り上がる九州学院スタンド。
九州学院のブラスバンドもまた熱い。
赤で統一されたカンフーバッド?を持った応援団と一糸乱れぬ動きは、
遠くブックスタンド裏からも見ても迫力がある。
秀岳館はその後8回裏に反撃で出るが、
3塁ランナーは帰還せず。0点のまま。
9回はお互いあっさりと打ち取った。
秀岳館のラストバッターが初球打ちをした玉は、
外野に取られて、アウト。
6-0で試合終了。
九州学院の勝利と共に、優勝と甲子園への切符を掴んだ。
瞬間九州学院チームの歓声と、
秀岳館チームの泣き崩れる姿。
相対する光景がそこにある。
その様子はあまりにも残酷だった。
悲しさと喜びが交差する様。
感情が爆発する様には、胸打たれる物があった。
普段の生活の中では、感情は抑制しなければならない。
じゃないと仕事にならないからだ。
でも選手達は様々な感情を爆発させている。
その様子、その光景は。とても尊いものに見えたんだ。
私は閉会式まで残る事にした。
祭りのクライマックスを見届ける為に。
それはとても日本的なイベントだった。
重役の手短なスピーチに国旗貢納。
メダルや優勝旗の授与と、先ほどと違って厳かな空気。
球場を行進している両チーム。
これを旧弊か考えるか、カルチャーと捉えるか。
議論の余地はあるだろうが、
日本のカルチャーに久々参加したような気分になった。
ある種の日本らしさがこの式典にはある。
とは言え、その間も肌はじりじりと焼け、
手すりやベンチは高熱を発している。
中々危険な式典には変わりない。
そして祭りは終わった。寄せ書き
撮影スタッフ達の基地と言った所か。
今年の大会ポスター
寄せ書き
球場の隣には熊本城がある。
ここは二の丸公園。
小学生の頃の遠足はここだった。
球場を出る時にもらった朝日新聞の号外。
奇跡的に球場の自販機に残っていたアクエリを買って、
2の丸公園の日陰で一休み。
涼しい風が吹く。
しばらく私はそのベンチに座っていた。
社会人になってからの初めての高校野球観戦は、最高だった。
何故みんながあの夏に憧れ、あの夏を愛すのか。
あの空間に行って改めて分かった。
そして私は人の強烈な感情を見るのが好きなんだって自覚した。
崩れる秀岳館チームにはもらい泣きしそうになった。
様々な想いが交差するあの時の球場には、
人を感化させるものがある。絶対にあると思う。
様々な辛い経験を果てに迎えた球児の舞台は、
とても残酷で、でも人生でも類を見ない程ドラマチックで。
爽やかで、その空の青はどこまでも透き通っている。
いい物を見せてもらったよ。
また来年。行けたらいいな。
次は試合開始のサイレンとか聞きたいしね。
公式サイト
https://kab-koshien.jp/
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