クレージーフードトラック 大柿ロクロウ ─砂にまみれた世界を2人は駆け抜けた─

2022年9月16日金曜日

月刊コミックバンチ 新潮社 大柿ロクロウ 漫画

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 独断と偏見とちょっとしたスパイス 第32回


クレージーフードトラック  大柿ロクロウ
─砂にまみれた世界を2人は駆け抜けた─




公式サイトより引用
https://www.shinchosha.co.jp/book/772341/






マンガの面白さって、自由がある事だと思う。

絵画と見間違う程にどこまでもアーティスティックなマンガから、
ただいたすらに読者受けを狙った、「媚びた」とか言われるマンガまで。


エゴイズムに。そして、どこまでも大衆的に。

この自由さが好き。


作家さんの画風、主義、思想、経験、発想、宗教、性癖、趣味等々、
どの媒体よりも作家性が解りやすくて、選択の幅も広い。

読者も沢山の作品から選ぶ自由がある。


それがまた良い。





さて今回紹介する作品はこちら。

『クレージーフードトラック』大柿ロクロウ 全3巻。


砂漠の荒野、おっさんと色黒少女のバディ、メシ、バトル、ハンティング。

荒野の砂漠でエギング(イカ釣り)したり、
天然のサウナに入ったりと作家さんの趣味が全開。


荒野のメシと旅、そしてガンアクションバトル。
まさに世紀末ロードムービーの様な、そんな作品に仕上がっている。




舞台は砂漠に覆われた世界。
所々に過去の文明の残骸が残る。


そんな世界に1台の場違いなフードトラックが走る。
それは、いかついおっさん・ゴードンが営むフードトラック。

料理の腕は抜群ながら、こんな世界だからお客さんは中々いない。

そんな中でも各地を回りながら、料理を振る舞う。


そんなある日、荒野を走っていると道路の真ん中に寝袋が。
危うく轢きかけた寝袋に中には全裸の少女・アリサが寝ていた。

その無防備さにあきれながらも、保護するゴードン。

しかし、アリサは「軍」の最重要機密であり、「軍」に追われていた。

その後の軍の襲撃をそのフィジカルと、
大砲を隠して積んでいたフードトラックの一撃で、
返り討ちにした2人。


ゴードンも『軍』と因縁があるようで、アリサを匿う事にする。

かくして、
渋くていかつい、そして料理の上手いコックのおっさん・ゴードンと、
隙あれば露出していて、凄まじいパワーと大食いな少女・アリサ。

2人のメシを巡る旅が始まった 。



『クレイジーフードトラック』の世紀末世界は、
治安は悪いが一定の秩序があって、電子マネーを使った取引もされている。

それなりに商業も盛んで、終末感が薄目。
世界は砂漠になってしまっているが、それなりの文明がある。


砂漠の砂には、砂を泳ぐ魚がいて、
砂漠にはその環境に適応した豚や鶏みたいなクリーチャーも沢山。

つまり食材の取り方とさばき方を覚えとけば、食料には困らない。
フードトラックの食料は買ったり、採取した食料で賄っている。

『マッドマックス』とかを意識しているように見えたから、
結構最悪な食料事情かなって思った。

『マッドマックス』の食料事情について知りたい方はPS4の『マッドマックス』をプレイしよう!
なお責任は取りません。

そけだけに、食事環境は思っている以上に豊か。
読者とあまり変わらないか、下手したら読者よりいいメシ食べている


さすがに『マッドマックス』みたいな地獄メシは勘弁だけど、
その世界オリジナルのメシみたいなのは見たかった。
(ゲテモノスープか、クリーチャーの丸焼きとかばかりになってしまう可能性もあるけれど。)


でも、料理の絵が普通に美味しそうだから、お腹がすく。

他にもシーフードカレーに寿司にフライドチキン。
イカバーガーにポークステーキ。

しかも現実的な見た目だからこそ味の想像はしやすい。
これだから架空のメシを描くってすごく難しい事だよね。

ごちそうは沢山出てくるけど、
でもやっぱり一番美味しそうなのは、一番最初のベーコンサンドかな。



物語はわりと何でもありな感じ。

メシの食材を探す話とか、街にいる軍の脱走兵を退治したりとか。
自然環境を上手く使って天然のサウナに入ったりと、
作者の趣味がにじみ出ている。

現実的に見ると不自然だけど、ノリと勢いで突き進むバトルアクションは
まさしくB級アクション映画みたいなノリ。

もちろん「メシ」に関する話が多め。
調理したり、採取したり、ハンティングしたり。



個人的に好きなのは砂漠の海でエギングする話。

砂漠の砂の海を泳ぐ様に進化した生き物たち。
この世界では魚やイカも砂を泳ぐ。

そこで2人は一つのロットを交代交代でエギングをする。 

こういう創作の世界だからできる事をやるシーンが好きだから、
すごく印象に残っている。



ただ話が単純でひねりが無かったり、
世界観に関する情報の掘り下げが無いから、話に物足りさなはある。 

この手の世紀末物は、
やりすぎると鬱々しいハードSFになっちゃうから難しいし、
この作品のライトな雰囲気をぐちゃぐちゃにしてしまう恐れもある。

だから複雑なんだけど、もうちょい話に爽快感とか、設定のダークさとか、
そういう緩急が欲しかったなって思う。

ただ作風はライトでキャッチーだから、
ストーリーと相成ってB級映画感がマシている。

それはそれで、作品の良さだ。



マンガの絵がいまいち安定感が無かったと様に感じる。
表紙絵やカラーページは作品の雰囲気が出てて好きなんだけど、
マンガ内の絵はいい絵。悪い絵の差が大きい。

例えばクリーチャーの絵は力が入っててかっこいい反面、
人の絵の書き込みは淡泊だから、ちぐはぐに見えてしまう。

全体的なちぐはぐ感は最後までぬぐえないな。




この作品一番好きなのはこの結末。

以下ネタバレの為反転。


追い詰められた2人は、逃げながらも最後の最後まで抵抗する。

元は「軍」の元帥だったゴートンの元に「軍」時代の部下も馳せ参じ、
派手な戦いをするが、抵抗及ばす。

アリサとゴードン。
そして2人を取り囲んだ大群の「軍」は、2人を仕留めた。

ここまでがネタバレ


これは意外だった。
爪痕を残そうという意地と一種の清さを感じた。

やろうと思えば、無難にハッピーエンドで終われたのにその道を選ばなかった。

そんな明るい作品に似つかない、
ハードボイルドで苦いエンディングが良いアクセントになったと思う。




この『クレージーフードトラック』は、
作者さんのTwitter宣伝がきっかけで読んだ作品。

何だかんだ言ってもTwitterの情報拡散力はやっぱりすごい。


ノリのB級映画感と作者さんの趣味が炸裂。旨そうなメシ。
そして、怒りのデスロード。

この短い旅を見届けよう。


サクッと読める3巻。
もしも機会があるなら読んでみよう。



公式サイト
https://www.comicbunch.com/manga/end/crazy_food/


来週は色んな人に刺さる。そんな写真集を取り上げます。

旧共産遺産 星野藍  
─バチカン半島に残る共産主義の残像を追う─


ここまで読んでいただきありがとうございます。
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それではまた来週お会いしましょう。





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