独断と偏見とちょっとしたスパイス 38
悲劇の藩主 細川光尚 第37回熊本大学付属図書館貴重資料展
─貴重な古文書を見に資料展へ行こう─
※『独断と偏見とちょっとしたスパイス』は、
基本的に金曜日の夜19時更新とさせていただいていますが、
今回はこのまま上げさせていただきます。
11月3日 熊大が紫熊祭(文化祭)で盛り上がっていた頃に。
ステージではライブが。
普段何もない場所には出店が立ち並び、わいわいがやがや。懐かしい雰囲気。
意外にも小さな子供連れの保護者に、中学生や高校生。
はたまた犬の散歩がてらに訪れたおじさんまで。
大学生が基本なんだけど、意外と来訪者にもばらつきがある。
そして垢ぬけた感じの爽やかな、そして青臭い大学生達が楽しそうにしている。
私にはあんな青春は無かったから、ちょっと羨ましい。
最近の私は20代前半で体験出来なかった事をやろうとしている。
いやむしろ半ば取り戻そうとしている感じがしていて、
毎日楽しいだけど、時折来る自己嫌悪とのシーソーゲームを繰り広げている。
私は熊本大学附属図書館へと足を運んでいた。
私が通っている放送大学熊本学習センターの真横にあるかなり立派な建物だ。
何度か中を入らせて頂いた事もあるが、
最高学府の図書館とあって、本もまた堅苦しい本が多い。
じっくりと回った訳ではないが、一般的な図書館と比べて娯楽性は少ない。
また駅にあるような改札が置かれている事に、
始めて訪れた時は大変驚いた記憶がある。
今回の目的は
『悲劇の藩主 細川光尚 第37回熊本大学付属図書館貴重資料展』を見る事。
細川光尚は肥後細川藩2代目藩主となった人物。
あまりにも濃すぎる曾祖父・細川幽斎。
細川家を始め様々な場所で引っかき回した問題児の祖父・細川三斎。
江戸幕府との太いパイプを持ち、外様大名ながら絶大な信頼を得た父・細川忠利。
とあまりにも濃いメンツが揃っていてる細川家の中では、
短命で、あまり影が薄いと言わざる負えない。
私に認識も忠利の息子。それぐらいのものだ。
あまり良く知らない……。
本当は稲葉継陽教授のセミナーまで聞けたら良かったが、時すでに遅し。
時間には間に合わず。
しかし、古文書ぐらいは見たいという事で訪れる事にした。
さて受付で頂いたのがこちらの冊子。
今回の資料展に関する解説目録だ。
今回展示された資料32点の写真と、その解説が描かれている。
そして展示を通して細川光尚の悲劇的な一生を追体験できる。
彼の人生は困難と苦痛に満ちたものだった。
正室と息子の死から始まり、
若干18歳で島原の乱で一連の戦いに参加。
父忠利の急死。
祖父三斎の隠居領7万石を三斎の息子で、
光尚の叔父にあたる細川立充(りゅういん)に相続させようと活動し、
細川藩内部で深刻な対立構造を生んでいた。
その対立は三斎と立充の死を持って終結するまで続く。
どうにか三斎の活動を阻止し肥後国を相続し国主となるが、光尚の困難は続く。
寛永の大飢饉。富岡城の在番役を幕府より命じられ事による軍役。
ポルトガル船の来航に伴う長崎出兵。
持病により健康状態の悪化。
そして、そのたびに充尚の遺言書に御国返上(セルフ改易の申し出)が書くが、
それを絶対に阻止したい家臣団とのせめぎ合い。
米の不作による肥後細川藩の経済破綻と、武士のリストラ計画書の作成。
地獄みたいなトピックが続き、ついに31歳でこの世を去った。
この時形見すら残せない程に、財政状態は火の車である。
ある意味現代人にも刺さる最期の様に思う。
そして、最後を飾った文書においては、
光尚の死を「御先祖の罪咎」という書き出しから始まる匿名の諫言状にて終わる。
筆頭家臣松井興長や、その税の重さを批判した匿名「勝家」。
彼の目的は一体何だったのだろうか。
そして以後細川藩は家老合議制の時代へと移る。
細川光尚の人生を「悲劇」と形容する理由がわかる。
困難な問題を対処するために足掻き、そして力尽きた光尚。
細川家という煌びやかイメージとはかけ離れた最期はただ物悲しい。
ただ、私はそんな短い命をあまりにも困難な問題を解決する為に、
ただただ賢明に働いた彼の一生を記憶に留めたいと思う。
そして細川家の展示会を行くたびに思うけど、
細川三斎の暴走ぶりがちょっと度が過ぎているし、
知れば知るほど三斎の問題児ぶりが凄い。
忠利と忠興は密に手紙のやり取りをしている一方で、
統治においては対立しているという部分にも、
細川家の難しい家庭の事情がちらついてしまう。
また島原の乱における原城の軍事地図である「有馬城絵図」や、
宮本武蔵の新資料も公開されていて、武蔵の肥後での生活を垣間見える事もできる。
特にこの絵図はまさしく地図。
近世の軍事地図のその精巧さには驚くはずだ。
細川忠利生前最後の手紙も、精神的に来るものがある。
これもまた見てみて欲しい。
こんな冊子が無料でもらえて、
貴重な文書も読めるこの資料展は4日金曜日と5日土曜日の2日間だけ。
時間は10時~17時。
場所は熊本大学附属図書館。
もし興味がある方はぜひとも行かれる事をおすすめします。
熊本大学より公開された本企画展に関する案内
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