独断と偏見とちょっとしたスパイス 58
─「蘇りの秘術」と本所七不思議がリンクしたその時、賽は投げられた─
( C)2023 SQUARE ENIX CO., LTD. 無断転載を禁じます。
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任天堂『パラノマサイト FILE 23 本所七不思議』紹介ページより引用
私が住む宇城市に不知火現象で知られる不知火町がある。
これは古代の時代。景行天皇が熊襲討伐の為九州を南下していた折に、
夜の航海であった為に迷ってしまう。その時海に浮かんだ不知火の火を頼り、
船を進めると無事陸地へと上がる事が出来た。というお話。
不知火と松橋の昔ばなし 不知火伝説 宇城市ホームページ
この様に地域に残る様々な逸話や怪談話、伝説と言った、
ローカルな話には商業作品とはまた違った魅力があって面白い。
内容は荒唐無稽で、時としてそのはちゃめちゃな内容に困惑してしまう。
そもそも現在では話の基本と言われている起承転結が無い事もある。
日本に残る神話とかも最たる例の一つだろうね。
あまりにも自由過ぎる発想からも、当時の人々の創作意欲の高さが解るだろう。
当時の人々のその想像力の逞しさに驚く。
元ネタとなった事実については、私達に知る術はもう無い。
しかし脈々と受け継がれた物語の面白さ、
そしてその興味深さは現在を生きる私達にも響いているはずだ。
さて、今回は実際する七不思議を題材にした作品を紹介したいと思う。
スクエアエニックスより発売された、
『パラノマサイト FILE 23 本所七不思議』 当サイト久々のゲーム紹介だ。
今年の3月にひっそりと発売されて以来、その面白さからじわじわと話題になり、
最終的には日本ゲーム大賞2023・優秀賞を受賞した話題作。
かく言う私も受賞の折にTwitter(正確にはXだけど)で最近知った口。
呪術スタンドバトルだのと書かれている一方、ゲームの評判は凄くいい。
Twitterを開けばファンアートが続々と見つかり、
レビューサイトを開けば「続編希望」の文字まで。
ついには期間限定でポップアップショップまで開設されたりと、
口コミからファンを確実に広げている。
Twitterでこのゲームの事を知り、早速遊んでみる事にした。
ちょうどセールをやっていたから1200円ぐらい。
まるでインディーズゲームの様な低価格。スクエニのゲームとは思えない。
率直に言ってとても面白かったし、お勧めしたいゲームだった。今めちゃハマってます。
続編を匂わせる発信が製作者側からもあり、今から続編が待ち遠しいです。
アニメ化や出版部門を持つスクエニだったらいずれコミック化もあるかもしれない。
それぐらい様々な可能性も感じさせる新タイトルが生まれるとは思ってもいなかった。
最近はもっぱら修羅の住民しかいないエイペックスや、
古代の古強者が多数参戦したドリフターズみたいな環境のF-ZERO99みたいな、
とにかくオンライン対戦ゲームばかり遊んでいて、テキストゲームは久しぶり。
最後に遊んだのはシュタインズゲートゼロだったかな。
今回はほとんど衝動買いで買った作品だったから、前情報はほとんど無し。
それでよかったと思う。
もしちょっとでもプレイする可能性のある人は、
あまり情報を入れずに遊ぶことをお勧めします。
あらすじ
時は昭和の東京、墨田区。学生運動も終息した頃。
大体1970年代位なのかなって思う。これは推測。
墨田区は俄かにオカルトファンの注目を集めていた。
噂では死者が蘇るという「蘇りの秘術」が実在し、
そしてその秘術には墨田区に伝わる「本所七不思議」が関連しているという。
(ちなみに本所七不思議は実在する。)
そして、この噂は実在した。
本所七不思議の話に紐づけられた呪物・呪詛珠。
これは七不思議に関する呪いを対象者に与え、相手を殺害する事が出来るもの。
ただし発動には様々な条件があり、その条件を相手が満たさないと発動できない。
持つ者はより殺意に強まり、人を殺す上での倫理観が弱まってしまう。
また呪詛珠を用いて相手を呪殺する事で、呪殺された相手の魂を集める事が出来、
一定の魂を集める事で死者は蘇る事ができる。
そして呪詛珠を持っている相手の魂は一般人の魂よりも価値が高く、
呪詛珠を持った人間を狙う事で、より少ない生け贄で死者が蘇る。
様々な形で呪詛珠を手に入れた人々は、それぞれの目的の為動き出した。
オカルトやサスペンス、はたまたSF要素までを含んだ群像劇。
本作はアドベンチャーゲームで
同じ時間軸で複数の登場人物を動かしながら物語は進行していきます。
登場人物達にはそれぞれの時間チャートがあり、
時間帯ごとに各シナリオに分けられている。
各シナリオ内での目的を果たす事で、次のシナリオが公開されるという仕組み。
途中でバットエンドに分岐する事もあるが、シナリオは1本道で大筋は変わらない。
各シナリオではマップを隅から隅まで調べたり、
または登場人物達と選択肢の中から選びながら会話をしたりする。
わりとベーシックなアドベンチャーゲームといった印象を受ける。
このゲームの魅力。それは展開が二転三転する先の読めないシナリオ。
このゲームのシナリオはジャンルがびっくりするぐらいに変わる。
オカルトにホラーにバトロワに探偵物に
サスペンスに学園物にタイムリープ系SFまで。
ひとつのジャンルとしてはまとめ難い位に様々な要素をはらんだ物語が展開する。
最初こそ呪術を用いたオカルトやホラーとして始まり、
続いて呪詛珠を用いたバトルロワイアル。主要人物がポンポン死ぬ地獄絵図となる。
それが中盤にかけて段々とサスペンスへと変化する。
このバトロワを鎮めるべく活動する刑事と呪詛を用いた大量殺人を行う犯人との死闘。
また物語と前後して起こった数々の事件。
登場人物の背景となった悲惨な事件の数々と物語との繋がりが少しずつ見えてくる。
伏線の張り方が本当に巧で、そして回収もまた凄い。
序盤から伏線が多く張り巡らされていて、
後半になるにつれて物語のスピード感がどんどんと増してくる。
そして、明かされる謎。黒幕の正体とは。
事件は終息へと向かうのか。二転三転としながら物語が回り始める。
キャラ同士のゆるい掛け合いや熱い場面、泣ける場面の緩急さが良くて、
全体を通してかなりシリアスながらも、
シリアス一辺倒じゃないバランスが凄く良かった。
昭和とは思えないコントみたいな刑事コンビに、
率直すぎるコメントが意外な夫人・子供っぽいけどハードボイルドな探偵コンビとか、
この辺の掛け合い凄く好き。それぞれの人物には相方がいて、
そのやり取りもまた魅力の一つだ。登場人物たちのキャラ立ちの良さも素晴らしい。
物語を動かす為の舞台道具のような、そんな機械的なものは感じなかった。
( C)2023 SQUARE ENIX CO., LTD. 無断転載を禁じます。
記載されている会社名・製品名・システム名などは、各社の商標、または登録商標です。
黒鈴ミヲ。おっとり系だけど、霊能力者で修羅場を潜り抜けてきた実力者。好き。
個人的に好きなのは終盤。
呪詛珠を持った2人がお互い夢の為に呪詛珠を握りしめて対面する場面。
その内片方を操作して呪詛珠を持っている事を隠しながら会話を始める。
この場面のスリリングさは並みのゲームでは中々味わえないものだった。
だってプレイヤーには「呪詛行使」。
つまり相手を呪殺するという選択肢が与えられているのだから。
しかし、一方で相手の呪詛珠の発動条件はわからない。
しかも相手が呪詛珠の発動条件に満たされているかもわからない。
殺すか殺されるか。それとも自分の夢を諦めるのか。
この選択肢は序盤のバトロワ路線を沸騰とさせる展開で、
このゲームで一番印象的な場面だった。
またプレイヤーすらも重要な登場人物へと変えた展開も好き。
わりとメタ要素を多く取り入れた本作。
例えば設定をいじったり……とか、そんなメタ推理で物語が進む事も。
メタルギアシリーズではリアル時間で1週間を過ぎるとボスが老衰で死んだりとか、
そんなメタ要素があったと聞くけど、この作品もそれに近いメタさはある。
終盤どうしても煮詰まってしまい、
データを削除で物語が動くのではと考えてデータ削除しかけた。
……消さなくて本当に良かった。
しかし、そのメタ要素にもちゃんと理由があって、
それがプレイヤーが物語の登場人物と一員となっている理由なんだけど、
これは実際に遊んでからのお楽しみ。
また舞台となった墨田区をリアルに再現している。
ちょっと現地を探索してみたいと思った。
これが聖地巡礼か。東京に言った時は行ってみたい。
小林元氏のイラストも好き。
主観なんだけどこういうリアル3割、アニメ7割ぐらいのイラストが好き。
最近知ったのだけど、DSソフト『すばらしきこのせかい』のイラストも担当されている。
あちらはポップ調でこちらはわりとリアル寄り。
作風に応じて作風をかき分ける技量。その違いを見比べてみるのも面白い。
東京の墨田区というローカルながら意外な舞台、昭和後期という時代背景、呪術。
そして予想だにしないストーリー。ただただ面白かった。
こんなにも面白いゲームが出ていた事を、遅れながらも知れて良かったと思う。
今の所はDL版のみの販売ではあるものの、とにかく安い。
どこかのコメントでこのゲームの事を「インディーズ潰し」と書いてあった。
大手ゲーム会社からこんな話題作を安価で出されたら、
そんなコメントが出てもしょうがない。
続編で発売された時、登場人物は続投するのか。それとも……。
とりあえず、まだ未プレイな人はぜひ遊んでみて欲しい。
そして一緒に続編を楽しみに待ちましょう!
公式サイト
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