独断と偏見とちょっとしたスパイス 第27回
アニメのワンシーンのように。 Akine coco
─現実が空想と重なる時に─
公式サイトより引用 https://www.gei-shin.co.jp/books/isbn978-4-87586-599-5/
新海誠監督のアニメは背景がとても綺麗。
現代の東京を描いているのに、現実よりも綺麗に描かれた世界。
徹底したリアリズム。どこまでも現実的な街並みなのに、
浮世離れした形容しがたい透明感。
彼の描く世界はまるで現実の写真を編集したかのようなリアリティがありながら、
それをフィクションへと落とし込み、違和感の無いアニメの世界にしてしまう。
それはまるで魔法の様。
背景が綺麗なアニメの一つとして、
個人的に一つおすすめしたいのが『生徒会役員共』。
内容は下ネタだらけのエロギャグアニメなんだけど、
その割に背景がやたらと綺麗に描かれている。
新海誠監督とは違い透明感は無い。
監督とは違った目線で描かれる、この綺麗な背景が好き。
特に生徒会室の窓から見える景色には背景担当のこだわりを感じる。
さて、今回は紹介するのは、
『アニメのワンシーンのように。』は、
Twitter上で写真を公開しているAkine cocoさんの初写真作品集です。
そのコンセプトは、タイトルの通り「アニメのワンシーンのように」。
まるでアニメのコンセプトアートのような、
アニメの世界を切り取った写真が多く収録されています。
写真の舞台は福井県。
九州の熊本に住む私には北陸地方は遠い場所なので、
こうやって知らない土地を見るのは楽しい。
熊本と大きな違いと言えば、この雪景色。
熊本では滅多に雪は積もらないから、雪化粧された街並みは綺麗だ。
そして、茅葺の屋根の家が未だ多く残っている事も興味深い。
熊本で茅葺屋根の家が見れるとしたら、
阿蘇の古民家か五家荘で保存されている旧家ぐらいしか思いつかない。
どんな田舎町に行っても、その屋根は瓦かトタン屋根しか無い。
熊本で茅葺屋根の家を探すのには、多大な困難を要するだろう。
個人的に一番好きな写真は表紙裏の一枚。
九頭竜川の河川敷で撮ったと思われる写真。
いかにも誰かが駆けだしそうな。そんな一枚が素敵。
夏からは始まった作品集は、
夜、夕暮れ、、夜から朝までの時間、秋、冬と言ったテーマごとに分けられ、
そこで掲載された写真は情緒的で、アニメのワンカットを切り取ったかのよう。
新海誠監督の影響を受けたとの事で、
その影響は随所に現れている。
写真から物語を空想する。
子供の頃に誰も遊んだ空想ごっこ遊びみたいに、
写真一枚一枚からも新しいストーリーを空想する楽しみが生まれた。
もし、この写真がアニメならば、今こういうシーンなのかなって考える。
普段写真を見る時にはあまり考えない、ストーリーを空想する遊び。
そんな遊びができたのも、この作品集ならではだと思う。
キャッチコピーの
「愛しく、切なく、懐かしい世界」というのはちょっと失敗だったと思う。
ノスタルジーな写真もあると思ってみると、
そこにある写真はただのリアルだった。
というのも私の住む宇城市という町は人口5万人。
中心地を除くと、この写真にあるような集落がまだ多く残っている。
都市部で住む人たちにとって、
この写真で現れる田舎にはノスタルジーな感情を抱くかもしれない。
私にとって、この写真の田舎町は現実、ただのリアルでしかない。
その落差みたいなのは正直感じた部分である。
アニメと現実の境界線が段々と狭まっている今。
「アニメから影響を受けた写真家さんによる作品が生まれた。」という事に、
アニメコンテンツの盛況な様が伝わってきます。
様々なコンテンツが複雑に交じり合うポップカルチャーの世界の楽しさと共に、
フィクションの様なリアルを楽しめる。そんな一冊です。
ここからは余談。
この作品集とイラストレーターのコラボ作品が見たいと思った。
各イラストレーターがこの写真を見てどのような解釈をするのか。
一体どのようなストーリーを描くのか。
フィクションとリアルの融合を、私は見てみたい。
公式サイト
https://www.gei-shin.co.jp/books/isbn978-4-87586-599-5/
https://twitter.com/akinecoco987?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor
著者さんのTwitter
多くの写真を投稿されています。
この本が気になった方は、まずTwitterをチェックしてもいいでしょう。
来週は、ローカルな本のご紹介。
『産交バスの終点へ 熊本県下全終点の記録』
ーマニアの情熱が生んだ力作ー
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それではまた来週お会いしましょう。
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